虫に頼ったり頼らなかったり、ホトケノザー開放花編ー

2022年3月27日 ALL生物
ホトケノザ

春、畑の土手で可愛らしいピンクの花を咲かせるホトケノザ。しばしば群生している姿が見られるありふれた雑草です。ところが、その生態はちょっと変わっています。今回は、ホトケノザについてのお話です。

ホトケノザとは?

ホトケノザ

ホトケノザ Lamium amplexicaule は、シソ科オドリコソウ属の植物です。アジア、ヨーロッパ、北アフリカなど、世界的に広く分布し、日本では本州以南に自生します。田んぼの畦や、畑の休耕地、道端などで見られ、都市部でも公園や花壇の脇などに生える身近な雑草です。主に3月〜6月頃にピンク色の花を付けますが、秋頃にも花を咲かせることが珍しくありません。

植物が派手な花を咲かせる理由

サクラの花

サクラの花

植物は、種子を作るために花を咲かせます。花というと、サクラやタンポポ、ツツジなど、赤や黄色や白など目立つ花弁を持つものを想像することが多いと思います。

ヨモギ

ヨモギの花

一方、スギやマツ、ヨモギの花は派手な花弁がなく地味です。植物が派手な花を作るか、地味な花を作るかは、植物が花粉を誰に運んでもらうかで決まります。花粉を昆虫や鳥などの動物に運んでもらうサクラやツツジなどは、花弁を派手にすることによって、それらの生き物に花の存在に気づいてもらったり、花を覚えてもらったりします。一方、風によって花粉が運ばれるスギやマツは、生き物に気づいてもらう必要がないため、派手にする必要がないのです。

ホトケノザの花粉を運ぶ昆虫

ケブカハナバチ

ケブカハナバチ Photo by Atalanta, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ホトケノザはきれいなピンク色の花を咲かせ、昆虫の報酬となる蜜を分泌する虫媒(昆虫に花粉を運んでもらう)植物です。ケブカハナバチ、ニッポンヒゲナガハナバチ、シロスジヒゲナガハナバチの3種ハナバチのオスによるホトケノザの花粉の運搬が観察されており、その中でもケブカハナバチが主に訪花していることが報告されています。ケブカハナバチは、乾いた粘土に穴を掘って巣を作るため、土塀のある古い民家の多い地域に生えるホトケノザには本種が多く訪花しますが、それ以外の地域では訪花がほとんど見られません。土塀が少なくなってしまった現在、せっかく花を咲かせても虫に花粉を運んでもらう機会がほとんどないのです。

それでは、どうしてホトケノザは絶滅することなくどこででも見られるのでしょうか。次回は、ホトケノザの花粉の受粉様式についてのお話です。

【参考文献】
https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-25430199/25430199seika.pdf