クビアカツヤカミキリみたいなテントウムシ

2022年6月15日 ALL生物

住宅街にある小さな公園で見慣れないテントウムシを発見しました。真っ黒の光沢のある上翅と真っ赤な頭部と胸部、外来種のクビアカツヤカミキリとよく似たカラーリングです(参考: クビアカツヤカミキリの生態1, 2)。実はこのテントウムシも又、近年日本に入ってきた外来種です。その名はムネアカオオクロテントウ。

ムネアカオオクロテントウとは?

ムネアカオオクロテントウ

ムネアカオオクロテントウ Synona consanguinea は、光沢のある真っ黒の上翅に、赤色の胸と頭をもつ、体長6〜7 mm ほどのテントウムシ科の昆虫です。

何を食べるの?

マルカメムシ

マルカメムシ

日本では、マルカメムシ Megacopta punctatissimum の幼虫が主な餌資源になっていると考えられています。マルカメムシは、クズを食べます。

クズ

クズ

クズはツル性の多年生植物で、北海道から九州に分布し、荒地や河川敷、林縁などの日当たりの良いところによく群生する植物です。そのクズを食べるマルカメムシも日本では普通種であり、ムネアカオオクロテントウにとって日本は餌資源にそれほど困らない環境であると考えられます。なお、ムネアカオオクロテントウの原産地の一つである台湾では、カメムシ、ツノゼミ、キジラミ、アブラムシ、カイガラムシを捕食することが報告されています。

日本で分布域が急速に拡大

原産地は、中国南部、台湾、東南アジアと言われています。日本では、2014年に関東で、2015年に大阪で初めて発見されました。大阪で発見されてからたった5年で、和歌山県、京都府、滋賀県、奈良県に分布が拡大しました。関東でも、東京で初めて見つかってから6年後には、埼玉県、神奈川県に広がりました。また、兵庫県、群馬県、静岡県でも見つかっています。移入経路は、わかっていません。

どこで見つかるの?

公園

ムネアカオオクロテントウが見つかった公園

餌資源が、クズを食草にするマルカメムシであるため、ムネアカオオクロテントウもクズの生えるところでよく見つかるようです。しかし、今回は住宅街の小さな公園で見つかりました(公園のクスノキの葉の裏で休んでいた)。もしかすると、日本でもマルカメムシ以外の虫を食べているのかもしれません。光沢のある真っ黒な上翅と赤色の胸と頭は、野外では結構目立ちます。ムネアカオオクロテントウは急速に分布を拡大させているため、これから多くの人の目に触れるようになるかもしれません。

【参考文献】

成彦初宿 (2021) 大阪市立自然史博物館・外来生物調査プロジェクト(Project A)によるムネアカオオクロテントウ・ユーカリハムシ・ヨツモンカメノコハムシの市民調査報告 初宿成彦. Bulletin of the Osaka Museum of Natural History, 75: 53–77.