寄らば大樹の上!
高木の枝や幹にポコポコとついている緑の塊、鳥の巣のようにもみえますが、実は寄生植物です。今回はヤドリギについてのお話です.
ヤドリギとは?
ヤドリギ (セイヨウヤドリギ)Viscum album とは、ビャクダン科ヤドリギ属の植物です。日本のヤドリギ Viscum album subsp. coloratum は、セイヨウヤドリギの亜種です。ビャクダン科の植物は世界に1000種ほどあり、知られている限りはすべての種が半寄生性です。半寄生植物とは、葉緑素を持たずに栄養を完全に宿主に頼る全寄生植物に対して、他の植物から栄養を奪いつつ自らも葉緑体を持ち、光合成を行う植物を指します。
どこでみられるの?
ヤドリギ Viscum album subsp. coloratumは、国外では、朝鮮半島、中国に分布し、国内では、北海道から九州でみられます。ケヤキやエノキ、ヤナギ、クワ、サクラなど様々な落葉広葉樹に寄生します。都市の公園や河川沿いなど、寄主木があれば森林でなくても普通にみられます。常緑であるため、寄主木が落葉している時期にはとてもよく目立ちます。
ヤドリギが高い場所に寄生する利点
ヤドリギは、高木の枝によく寄生していますが、それには少なくとも2つの利点があると考えられます。
一つ目は日当たりです。寄主木の幹や枝につく以上、その枝葉の影になってしまうことは免れません。しかし、高い位置であれば、光がそこに到達するまで通過する葉の数が少ないため、光量の減衰が少なく抑えられます。さらに、寄主木が林冠に達していれば、他の植物の陰になることは避けられると考えられます。冬期には落葉樹である寄主木は葉を落とすため、日光を独占できる環境になります。このように、樹木が何年もかかって獲得する日当たりの良い林冠環境を、ヤドリギは発芽直後から享受することができるのです。また、林冠に到達するような高木は、丈夫な幹の維持に大きなコストを払う必要がありますが、ヤドリギはその必要がありません。
二つ目の利点は、地上を徘徊するシカやウサギなどの草食動物や、主に地面付近で採食をする植食性の昆虫などからの捕食が回避できることです。高木に育つ植物であっても、種が発芽してから少なくとも最初の数年間は、地上を徘徊する昆虫や動物に食べられる危険にさらされます。大木になって、葉を高い位置のつけるようになっても、樹皮剥ぎの被害に遭うこともあります。しかし、ヤドリギは生涯を通してそのような地面近くにいる生物からの捕食の心配がありません。
次回は、ヤドリギが高木に寄生する方法についてのお話です。