ヒバリのこころ
春の草はらに座っていると、とても賑やかなさえずりが聞こえてきます。青空に空高く登りながらさえずるヒバリは、体が小さくても存在感はとても大きな鳥です。どうしてヒバリはあれほど賑やかにさえずるのでしょうか。
ヒバリとは?
ヒバリ Alauda arvensis はスズメ目ヒバリ科ヒバリ属の鳥です。旧北区(北アフリカ北部、ユーラシア大陸の中緯度から高緯度)に分布します。亜種のヒバリ Alauda arvensis subsp. japonicaは日本全国で見られ、積雪の少ない地域では留鳥ですが、積雪の多い地域では冬季に南下する漂鳥です。他亜種のオオヒバリ Alauda arvensis subsp. pekinensis とカラフトチュウヒバリ Alauda arvensis subsp. lonnbergi は、冬季に越冬のために飛来しますが、繁殖を日本で行うのは Alauda arvensis subsp. japonica だけです。
ヒバリの生態
ヒバリは農耕地、草原、河原などの短い草が茂った環境に生息します。主に地上で活動し、植物の種子、昆虫、クモなどを食べます。枯れ草や、その根を材料として地上に巣を作ります。巣材を集めるのはメスだけです。オスはメスの巣材集めに同行しますが、協力することはなく、たださえずるだけです。
どうして鳴くの?
ヒバリは4月上旬からの繁殖期(巣作りから雛の巣立ちまで)に、オスが縄張りを主張するために上空もしくは地上の小高いところで鳴きます。ヒバリは空高く上がって鳴くことが有名ですが、地上でさえずることのほうが時間としては長いようです。日中であればさえずりますが、特に早朝の4-5時頃と夕方の17-19時頃が最も多い時間帯です。一回の繁殖期間は1ヶ月ほどで、繁殖は2-4回(平均2.3回)繰り返し行われることが多いです。
ニュージーランドで行われた研究では、1ヘクタールあたり0.7個ほどの巣が作られ、それぞれのつがいは直径50mから100mほど(約2000 – 8000 ㎡)の縄張りをもつことが報告されています。日本でも縄張りの面積はおおよそ5000から10000 ㎡ほどです。ヒバリの繁殖に適した草原では、縄張りが隣接して作られます。隣の縄張りのオスが自分の縄張りとの境界の近くに来ると、余計に激しくさえずったり、時には接触を伴う攻撃をして争います。ヒバリのさえずりは、多くの場合メスを誘うためのものというよりは、隣のオスを追い出す目的が強いと考えられます。
減少するヒバリの生息地
ヒバリが繁殖するのに適した環境は草丈の低い草原です。巣の数は草丈20-30cmほどの環境で最も多くなると報告されています。麦畑などの農耕地にも生息することはできますが、乾燥した土の上に巣を作るため水田では繁殖することができません。草地は多くの場合、火入れや刈り取りなどの管理をしないとすぐに背丈の高いヤブになってしまいます。近年は管理された草地が減少しているため、ヒバリが繁殖できる環境が減ってきています。
[参考文献]
羽田健三 & 小淵順子. 1967. ヒバリの生活史に関する研究. 山階鳥類研究所研究報告, 5(1): 72–84.
Thomsen, S. 2002. The ecology of the skylark Alauda arvensis L. on the Canterbury Plains, New Zealand. Lincoln University.