はちっぽいが、が。
ハチっぽい生き物と言えばハナアブ類が有名ですが、ガの仲間にもハチに擬態しているものがあります。
スカシバガとは?
スカシバガ科 Sesiidae はチョウ目に属する昆虫です。多くの種は熱帯に分布しますが、日本でも38種が見られます。本科の多くの種が翅の全面または一部に鱗粉がありません。日本で見られるスカシバガ科に属する種は最大でも5cm程度と、それほど大きいガではありません。透明の翅を持つことで、スカシバガ科のガはハチに擬態していると考えられています。
もはやハチ擬態には見えないモモブトスカシバ
スカシバガ科の中には、私達には奇妙な姿に見えるものも存在します。モモブトスカシバ Macroscelesia japonaは、やはり翅に鱗粉がなく透明ですが、後脚に目立つ長い毛をつけています。モモブトスカシバは、北海道から九州の森林に生息し、幼虫はウリ科のアマチャズルに虫癭を作ります。
近縁のオオモモブトスカシバ Melittia sangaica は同様の場所に毛がありますが、その毛は黄色いため、飛翔時に花粉団子をつけたミツバチに見えるようにしているのではないかという仮説があります。
しかし、モモブトスカシバは、少なくとも人の目にはもはや擬態しているようには見えません。天敵にどう見えているのかは分かりませんが、なんとも不思議な見た目の生き物です。
もうちょっとよく知られている「スカシバ」
スカシバガ科は知らない方でも、オオスカシバ Cephonodes hylas なら見たことがあるかもしれません。オオスカシバはスズメガ科オオスカシバ属のガです。国外では中国、東南アジア、インドなどに分布し、国内では本州以南に生息します。幼虫はクチナシの葉を食べます。クチナシは庭木や街路樹にも利用される樹木であるため、都市部にも生息し、植え込みの花の蜜を成虫が吸っている姿がよく見られます。空中でホバリングを行いながら花の蜜を吸い、高速で別の花に移動してまたホバリングする様子はハチドリを思わせます。しかし、鳥に比べると流石に小さく、またハチドリが生息していない日本ではやはりハチに間違えられることが多いです。
オオスカシバと他のスズメガ科との違い
スズメガ科の昆虫の多くは一般的なガの仲間と同様に翅が鱗粉で覆われています。
しかし、オオスカシバの翅には鱗粉がなく透明です。翅以外の部分には鱗粉があり、他のスズメガ科の種と似た雰囲気があります。この透明な翅と横に縞の入った体の柄はハチに擬態していると考えられています。活動時間にも差があり、多くのスズメガの仲間は夜に活動しますが、オオスカシバは昼に活動します。ハチに擬態することで天敵を避けて夜間に活動する必要がない可能性が考えられます。