几帳面なイモキバガ
折りたたまれたサツマイモの葉の中には、おしゃれなイモムシがいました。イモキバガの幼虫は、サツマイモの葉を綴って巣を作ります。
イモキバガとは?
イモキバガ Helcystogramma trianulella は、チョウ目キバガ科の昆虫です。国外では中国、台湾、インド、ヨーロッパなどで報告されており、日本では、北海道から南西諸島に分布します。成虫で越冬し、年に3-6回世代交代を行う多化性です。幼虫はサツマイモやヒルガオなどのヒルガオ科の植物の葉を食べます。葉を綴り、その中で採食を行い、蛹になります。幼虫は5月から10月頃まで見られ、終齢幼虫は15mmほどです。25℃の条件下だと、幼虫期間は12日、蛹期間は7日ほどです。大発生するとサツマイモの収量に影響すると考えられており、害虫として問題になることがあります。綴られた葉の中に農薬が届きにくいため、駆除が難しい場合があるようです。
イモキバガの綴った葉の中の様子
巣の内側も、外側を留めてあるのと同じように、何本もの糸で留められていました。また、糞が数か所にかためて溜めてありました。
以前ケムリノキに作られたトサカフトメイガの巣の観察をしましたが、トサカフトメイガは、巣の中にも糸が張り巡らされ、糞もそのあたりに散乱し、あまりきれいとはいえない感じでした。
それに比べるとイモキバガの巣は随分全体に小綺麗な感じで、幼虫本体の柄も相まってスタイリッシュです。
イモキバガが几帳面なのはそれだけではありません。せっかく綴った葉を食べてしまうと巣はどんどん壊れてしまいますが、葉に孔を開けることなく外側の硬い部分だけ残して葉を食べます。そのため、中の幼虫はずっと葉に覆われたままです。巣の壁面を全部食い尽くして食べるものがなくなるまでは、一度綴った安全な巣の中で生活することができます。ニジュウヤホシテントウのように、硬くて栄養の少ない部分を残して葉の片面を削り取るように食べる昆虫は他にもいますが、イモキバガによるこのような採餌は、栄養と居住空間の確保の点で一石二鳥といえます。
ちなみに巣は、葉の表面を内側にして折ることが多いようですが、裏面を内側にしていることもあり、強いこだわりはないようです。また、一つの葉に一匹だけというこだわりも特にはないらしく、一枚の葉に2つの巣が作られているものもありました。
巣の修復は急ピッチ
巣を開かれてしまったイモキバガ、逃げることもなくしばらくじっとしていましたが、しばらくすると糸を吐きながら頭を高速に左右に動かし始めました。どうやら巣を修復するようです。新たにす場所を探してはじめから作り直すよりは、修復する方が手間が小さいのでしょう。物持ちの良い昆虫です。