チョウみたいなガ、イカリモンガ
何だあのチョウは?と思ったら、ガでした。
イカリモンガとは?

イカリモンガ Pterodecta felderi は、チョウ目イカリモンガ科の前翅長2cmほどのガです。日本に生息するイカリモンガ科のガは、本種とベニイカリモンガ Callidula attenuata の2種のみです。イカリモンガは、国外では、中国、台湾、シベリア、朝鮮半島に分布し、国内では、北海道から九州の低地から山地に生息します。前翅の表に錨(イカリ)のような模様があるのが和名の由来です。成虫は4月-5月と7月-8月の2回発生し、成虫で越冬します。
イカリモンガの観察

午後3時頃、林縁でスズメガとスズメバチと共にコウヤボウキの花の蜜を吸っているのを見つけました。

日中に活動し、触角が細く、翅をたたんで止まっているところから、一見チョウの仲間に見えます。近寄ってよく見ると、腹が太くチョウにしてはずんぐりむっくりした体型です。また、触角の先が太くなるというチョウの特徴は、イカリモンガにはありません。
幼虫の食草

幼虫透明感のある緑色です。食草はちょっと変わっていて、シダ植物であるオシダ科のイノデ属の葉です。シダ植物を食草にするチョウ目の昆虫は、あまり多くありません。イノデ属の葉を綴って巣を作りその中に潜みます。
チョウのように見えるガはチョウではないのか。

昼行性で、触角の先が棍棒のように膨らんでいる、翅をたたんで止まるなどの共通の特徴を持っているアゲハチョウ上科、セセリチョウ上科、シャクガモドキ上科の3上科に属する7科のみがチョウと呼ばれます。これらの3上科は互いに近縁です。それ以外に分類されるチョウ目の昆虫は、すべてガと分類されるため、イカリモンガ科のイカリモンガはガです。

しかし、そもそも、ガという括りはチョウ目(鱗翅目)の中のチョウ以外を指し、系統的には側系統です。そのため、チョウの中にもガのような特徴を持つもの、反対にイカリモンガのようにチョウのような特徴をもつガもいくつも存在します。フランスやドイツなど、ガとチョウを分けない地域もあります。ちなみにイカリモンガ科は、ガの仲間の中では、カギバガ科やシャクガ科などと並んで、チョウ(上述の3上科)と近縁です。



