2026年2月19日

同じ水辺で明暗が分かれたバンとオオバン

前回に引き続き、バンとオオバンについて、今回は、その違いに焦点を当てます。

バンとオオバンの見た目の違い

名前の通り、オオバンはバンよりも大きいですが、横に並んでくれないとよくわからないものです。しかも、バンもオオバンもほぼ全身真っ黒で、遠目にはよく似ています。しかし、顔のワンポイントが明らかに異なります。バンは額から嘴の根本が赤く、オオバンは額が白いです。ですので、それほど見分けるのは難しくありません。

バン
バン
オオバン
オオバン

また、クイナの仲間らしく、体のわりに足がやたらと大きく見える点は、この2種に共通していますが、興味深いことにバンの足には水かきがありませんが、オオバンには水かきがあります。

バン
バンの足(若鶏は、全体に茶色っぽく、嘴も黄色っぽい色をしています。)
Fulica_atra_(walking)
オオバンの足 Photo by Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

オオバンは水の中にいることが多いため、バンに比べて足の先まで見えることは少ないですが、ニシキギの枝を彷彿とさせるオオバンの特徴的な足は、見応えがあります。

ニシキギ
ニシキギ

増えるオオバンと減るバン

IUCNレッドリストによると、バンは世界に910万羽から1350万羽、オオバンは530万羽から650万羽生息すると推定され、どちらも絶滅のおそれがなく、近い将来に絶滅に瀕する見込みも低い低危険種(Least Concern)に分類されています。しかし、オオバンは個体数が増加傾向である一方、バンは減少傾向であると推定されています。

バン
バン

バンの減少は日本でも顕著です。環境省の調査報告によると、1970年代以降、バンの生息が確認された地域は減少傾向にあります。北海道から南西諸島にかけて、1990年代と2010年代にほぼ同一地点で実施された調査では、バンが確認された地点数が87地点から42地点へと減少し、確認個体数も202羽から84羽へと大きく減少しました。この背景には、生息環境である水田が減少したことや、そこに生息する生物が減少し、餌資源が乏しくなったことなどが影響していると推測されています。

オオバン
オオバン

一方で、オオバンは1980年代頃から繁殖地が広がり始め、1960年代まで秋田県以北で繁殖していたものが1990年代以降には九州以北の多くの都道府県で繁殖がみられるようになりました。また越冬数も、日本全国の記録はありませんが、琵琶湖で行われた調査では、2005年ごろに14000羽ほどだったものが、2016年には83000羽ほどになったという記録があります。その後、琵琶湖での越冬数は減少しましたが、周辺の地域に移動したためであろうという推察があり、全国的にはやはり増加傾向とみられています。

オオバンは足に水かきをもち、バンに比べて泳ぎを得意としています。浅い水場を歩き回り、昆虫や貝類なども重要な餌資源として利用するバンに対し、オオバンは開けた池や河川の水面に浮かび、水草などの植物性の餌資源を主に利用します。このように、同じ水辺環境であっても、両種の生息環境は異なり、水田をはじめとする草の生えた水辺環境の減少はバンに対してネガティブな影響を及ぼしていると考えられます。

また、増加傾向にある外来の水生植物が、オオバンの餌資源となっているという観察例もあります。これらのことから、現在の日本では、バンにとっては生息しにくく、オオバンにとっては生息しやすい条件を満たす環境が多くなっているのかもしれません。


【参考文献】
環境省. 2022. 参考資料6 バンに関する生息情報. 狩猟鳥獣に関する検討会 令和4年2月7日検討会 議事次第・資料. URL: https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort6/effort6-R03/
神山和夫, 加藤貴大. 2018. オオバンは全国的に増加、ところにより減少. バードリサーチニュース. URL: https://db3.bird-research.jp/news/201807-no3/