地衣類とはどんな生き物? — 色も形もバラエティー豊かな共生体 —

2019年1月31日 ALL生物

日頃生活していて地衣類という分類群の生き物を意識することはないかもしれません。しかし、意外と身近なところで地衣類は、生きています。あまり知られていない生物ではありませすが、派手でユニークな形をしていることも多いため、正体を知らずに気に留めたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は、そんな地衣類についてのお話です。

地衣類とは?

地衣類

地衣類は、菌類と藻類(主に緑藻とシアノバクテリア)の複合体です。藻類とは、酸素を発生させる光合成を行う生物のうち、コケ植物、シダ植物、種子植物を除いた生物のことを指します。地衣類の形状は、菌が主に作っています。分類学では複合体を形成する菌類の種類で分類します。藻類と共生する菌類は、単系統ではないため、地衣類は、系統的にまとまる分類群ではありません。地衣類とは、藻類と共生する菌類を指す総称です。世界では、1万4千種〜2万種いるといわれ、日本では約1600種が記録されています。

菌類と藻類の共生関係

地衣類

藻類は、太陽光を得て、光合成を行いエネルギーを作ります。藻類が使う太陽光の波長は藻類の種類によって異なっており、藻類自体は、派手な色をしていることが多いです。例えば、オレンジ色に見える藻類は、青色の波長の光を吸収して光合成に利用し、オレンジ色は吸収せずに反射しています。藻類は、このように、植物と同様、光さえあれば、自分で栄養を作り出すことができます。藻類と共生している菌は、藻類から栄養をもらいます。一方、菌類は、藻類が生きやすい環境を提供します。

地衣類はどこで見つかるの?

地衣類

地衣類が発生しやすい場所は、光が当たり、乾燥しにくい場所です。しかし、そのような場所は、植物にとっても生育しやすい場所です。植物が侵入すると、その下は被陰され、太陽光があまり届かなくなってしまいます。そのため、地衣類は、光が当たり、乾燥しにくいという条件に加え、植物が生えるのが難しいところで見られることが多いです。ほとんどの植物は、根っこを地面に広げて、水や栄養を吸収したり植物体の支持を行います。そのため、植物が生育するためには、根が伸ばせる柔らかい地面が必要です。植物は、コンクリートや岩が露出したような場所では、根を広げることができず生育できません。しかし、地衣類はそのような環境でも、根を張らないため生息することができます。日本では、ジメジメした林道のアスファルトや側溝のコンクリート壁などでオレンジ色の地衣類を見かけることがよくあります。また、樹木の幹に張り付いたり、樹木の枝に引っかかってぶら下がるものもあります。

いろいろな形態をもつ地衣類

日本で見かける地衣類は、コンクリートなどに張り付いているように見えるものが多いですが、立体的な地衣類も存在します。地衣類は形態によって大きく3つに分かれます。

葉状地衣類

葉っぱのように平らに広がった形をしている地衣類です。

地衣類

地衣類

痂状(かじょう)地衣類

日本でもよく見かける立体構造がほとんどない地衣類です。

地衣類

地衣類

木の枝にくっついています。地衣類

 

樹状地衣類

まるで白髪でも引っかかっているように見える形の地衣類です。

地衣類

こちらは、サンゴのようです。上についている黒い玉は、菌類の胞子体だと思われます。

地衣類

 

街なかでも、森のなかでも見られる地衣類、ぜひ一度、観察してみてください。そのバラエティーの豊かさに驚かされます。