マツの木も新しい葉をのばす5月。マツの木を利用する生き物は意外とたくさんいます。今回は、マツの木で見つけた幼虫や卵が一体どんな生き物になるのかクイズ形式で紹介したいと思います。
まずは、集団でマツの若い葉を食べていたこの芋虫。近づくと一斉に変わった動きを始めました。一体なんの幼虫でしょう。
早速、答えです。
この幼虫は、マツノキハバチというハチの幼虫です。葉っぱを食べる芋虫を見ると、チョウやガになるのではないかと思う人が多いのではないでしょうか。しかし、ハチの仲間も幼虫の頃は芋虫のような姿をしており、葉っぱを食べるものもいます。ハバチという名前がついていますが、葉っぱを食べるのは、幼虫のときだけで、成虫になると葉は食べません。また、ハバチやキバチの仲間は毒針を持っておらず、刺すことはありません。
マツノキハバチは、マツの木の上で群生しているのがよく見られ、マツの新しい葉を大量に食べるため、よく目立ちます。群生しないと生存率が低下するという研究報告もあります。若齢林で大発生して、マツの害虫として扱われることがありますが、毎年発生することはほとんどなく1~2年ほどでまた見られなくなることが多いようです。幼虫は、5月ごろによく見られ、6月ごろには地面の落葉中で繭になり、9月上旬から10月下旬頃に、成虫になります。
ちなみにこの奇妙な動きの理由については、よく知られていませんが、もしかすると、過去にお話した、フクラスズメの幼虫と同じように外敵から見を守る目的があるのかもしれません。
次は、この生き物。表面は固く、カタツムリの殻のようにも見えますが、全く動きません。
しばらく飼ってみると、中から、ヒラタアブの仲間が出てきました。ホソヒラタアブの蛹だったようです。
次は、この幼虫です。
答えは、ナミテントウです。
マツノキで見かけるナミテントウっぽいテントウムシは、クリサキテントウの可能性もあります。成虫の外見がナミテントウと全く変わりませんので、上の成虫の写真は、ナミテントウかクリサキテントウかはわかりません。幼虫はクリサキテントウとナミテントウで大きく異なるので、区別ができます。上の幼虫の写真はナミテントウです。このマツの木ではクリサキテントウの幼虫が見つからなかったので、成虫もナミテントウだとは思われますが、断言は出来ません。
クリサキテントウの幼虫は、ナミテントウの幼虫よりも動きが素早く、すばしっこいマツノオオアブラムシをより効率よく捕食できることが報告されています。(Noriyuki et al. 2011)
なんとなく、あんまり生き物が居そうにないマツ。観察してみると意外といろいろな生き物に出会えて楽しいです。
参考文献:Noriyuki S, Osawa N, Nishida T. Prey capture performance in hatchlings of two sibling Harmonia ladybird species in relation to maternal investment through sibling cannibalism. Ecol Entomol. 2011;3:282-289.