
最近、都会のビルの屋上にミツバチの巣が設置されたというニュースをよく見かけるようになりました。多くの場合、はちみつ用に育てられるミツバチは、セイヨウミツバチであり、日本の在来種ではありません。日本各地で飼育されているにもかかわらず、セイヨウミツバチは、野生化することはありません。どうしてでしょうか。今回は、ミツバチについてのお話です。
ミツバチとは?
ミツバチ科ミツバチ属に属する昆虫を指し、世界には11種います。日本に生息する野生種は、トウヨウミツバチ Apis cerana の亜種であるニホンミツバチ Apis cerana japonica のみです。日本では、ニホンミツバチの他に、セイヨウミツバチ Apis mellifera が野外でよく観察されます。日本でセイヨウミツバチが最初に導入されたのは、明治時代です。導入した亜種は、イタリア亜種である Apis mellifera ligustica で、アメリカから導入されました。セイヨウミツバチは、ニホンミツバチよりも飼育が容易です。そのため、蜜の採集や作物の花粉の受粉用に飼育されているミツバチのほとんどがセイヨウミツバチです。世界的にも、利用されているミツバチのほとんどがセイヨウミツバチで、特に、Apis mellifera ligustica がよく用いられます。
どうしてセイヨウミツバチは、ニホンミツバチよりも飼育しやすいのか?

セイヨウミツバチの巣箱
セイヨウミツバチは、一度巣を形成すると、少々環境が悪くても粘り強く同じ巣を使い続ける傾向があります。一方、ニホンミツバチは、巣の周りに食べ物がなくなったり、気温が変化したり、巣箱を何回も開けられるといったストレスが与えられると、みんなで別の巣に引っ越ししてしまいます。養蜂家にとっては、ニホンミツバチの飼育は、急にハチがいなくなってしまうリスクを負うことになります。また、一般的に、セイヨウミツバチの方が一つの巣から取れる蜜量が多いのも利点です。
セイヨウミツバチが野生化しないわけ

蜂球 Photo by Takahashi [CC BY-SA 2.1 jp], via Wikimedia Commons
セイヨウミツバチの巣を狙うキイロスズメバチ
セイヨウミツバチが野生化した島
セイヨウミツバチは、日本のすべての地域で野生化していないわけではありません。小笠原諸島には、スズメバチが生息しておらず、セイヨウミツバチが野生化しています。セイヨウミツバチは、多くの種類の植物を利用できる優秀な送粉者である一方、在来のハナバチ類の餌資源を奪ってしまうことで、それらハナバチ類への影響が懸念されています。こういったスズメバチがいない地域への、セイヨウミツバチの導入は、自然生態系に多大な影響を与えてしまう可能性があることを注意をしなければなりません。