トゲナナフシは、何の木の葉がお好き?

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トゲナナフシは、何の木の葉がお好き?

2019-12-01T18:14:39+09:00 2019年11月30日|Categories: ALL 生物|Tags: , |
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11月上旬、家の玄関の前にひょっこり現れたトゲナナフシ。個体密度がそれほど高くない上に、擬態のスペシャリストであるため、探したところでなかなか見つけられない彼らに偶然会うことができました。この機会に、彼らが何を好んで食べているのか調べてみました。

トゲナナフシとは?

トゲナナフシナナフシ目は、主に熱帯地域に多く生息する昆虫で、世界には2500種ほど記録されています。日本では、15種ほどしか生息していません。トゲナナフシは、ナナフシ目トビナナフシ科エダナナフシ亜科の昆虫です。日本では、トゲのある唯一のナナフシですので、日本でこの種を同定するのは容易です。長さが7cmほどになるものもあり、ナナフシの中では、がっしりとした体型で、トゲもあるため、比較的インパクトのある見た目をしています。6月から12月頃に見られます。ナナフシの仲間としては、それほど珍しい種ではありませんが、オスがほとんど見つかっておらず、メスは単為生殖で卵を生むことが知られています。分布は、関東以西です。

トゲナナフシは、何の木の葉が好き?

ナナフシは、植物の葉を食べる植食性の昆虫です。トゲナナフシは、翅を持っておらず、もっぱら歩いて移動するため、長距離を素早く移動することができません。ナナフシの中でも、トゲナナフシのように翅を持たないものは、餌の選り好みをしていると、十分な量の餌を確保することが困難です。そのため、一般に、飛翔能力を持たないナナフシの餌として利用できる植物の種数は、飛翔能力を持つナナフシよりも多いと言われています。様々な種類の餌を利用できる性質を広食性と言い、限られた種類の餌しか利用できない性質を狭食性と言います。

私の家の玄関に現れたトゲナナフシも、遠いところから移動してきたとは考えにくいので、きっと近くに植わっている木の葉を食べているはず。ということで、庭にあった9種(ミヤギノハギ、イロハモミジ、イヌマキ、シラカシ、オシロイバナ、ヤブツバキ、ユズ、サザンカ、トベラ)の木の葉を与えてみて、何を好んで食べるかを観察してみました。ちなみに、トゲナナフシは、基本的には夜行性のため、葉っぱを食べるのはほとんどが夜でしたが、昼間に活発に動き回っている日もあり、その日は、昼間にも葉を食べていました。

トゲナナフシ

観察風景

以下がミヤギノハギ、イロハモミジ、イヌマキ、シラカシ、オシロイバナ、ヤブツバキを同時に7日間与えたときにトゲナナフシが食べた葉の面積(cm2)です。

以下がユズ、サザンカ、トベラを同時に2日間与えたときにトゲナナフシが食べた葉の面積(cm2)です。

採餌されて欠けた葉

トゲナナフシの食痕

トゲナナフシの食べた跡  ギザギザした食痕が残ります。

これらの結果から、以下のようなトゲナナフシの採餌行動の特徴がわかりました。

・9種の植物のうち、イヌマキ以外の8種の植物は、採餌された。
→予想通り、かなり広食性(食べられる食べ物の種類が多い)の生物であると考える。

・シラカシのように少しだけかじって食べなかった種と、オシロイバナのように、コンスタントにたくさん食べられた種があった。
→複数種の植物が目の前にある場合、少しだけかじってみて、相対的に餌として優れた葉を主に採餌する可能性がある。

・オシロイバナ、ヤブツバキ、トベラがよく食べられた。
→葉の柔らかいオシロイバナだけではなく、ヤブツバキやトベラもたくさん食べられたことから、採餌する葉を選択する際、葉の柔らかさを重視していない可能性が高い。

・ユズもかじられた。
→柑橘類の葉は、忌避する昆虫が多いが、トゲナナフシは摂食する。

・イヌマキだけ食べられなかった。
→9種の植物の中で、イヌマキだけが針葉樹であった。他の針葉樹も試してみる必要があるが、針葉樹は、あまり好まない傾向があるかもしれない。

今回の実験から、トゲナナフシは、ミヤギノハギ、イロハモミジ、シラカシ、オシロイバナ、ヤブツバキ、ユズ、サザンカ、トベラを摂食することが可能であると明らかになり、このうち、オシロイバナ、ヤブツバキ、トベラを比較的好んで食べる可能性が示唆されました(葉を与えた期間が植物によって異なることなるため結果の解釈に注意は必要)。ただし、葉を与えた順序や、その鮮度が結果に影響を及ぼしている可能性もあります。また、ある植物が本当に対象としている昆虫の餌資源として利用できるのか否かを調べる際には、厳密には、対象の昆虫がその植物を食べて成長し、繁殖できるのかまでを確認する必要があります。今回の実験から言えることは、餌として利用でき”うる”ということにとどまることには留意しなければなりません。