肉を食べるカブトムシ -コカブトムシ-

2020年6月25日 ALL生物

夏の人気者の昆虫といえばカブトムシですが、コカブトムシという生き物はご存知でしょうか。あまり見つからないせいか、カブトムシと比べ随分知名度の低いコカブトムシですが、カブトムシと名がつくだけあって、小さいながらもちゃんと角を持っています。今回は、コカブトムシについてのお話です。

コカブトムシとは?

コウチュウ目コガネムシ科コカブト属に属する生き物です。
カブトという名前は付いていますが、コガネムシ科カブトムシ属であるカブトムシとは、属レベルで異なります。

どんな形態なの?

コカブト

体の大きさは、18mm-24mmで雌雄差はありません。また、雌雄ともに、頭部に小さな角が一本ついています。脚がしっかりしていて体も丸っこくがっしりしている印象があります。前胸の中央が丸く凹んでいるのがオスで、細長く凹んでいるのがメスです。

どこにいるの?

日本のほぼ全域に生息します。日本以外では、朝鮮、中国、台湾で見つかっています。

肉食のカブトムシ

コカブト

昆虫ゼリーの中に挿し込まれた左右に開く顎が見えます。

カブトムシが、樹液を食べるのに対し、コカブトムシは、主に他の生物の肉を食べるという点で大きく生態が異なります。とくに、柔らかい生き物を好み、ミミズや芋虫をよく食べているようです。
飼育下では、シーチキンや鶏むね肉、昆虫ゼリーを食べました。
カブトムシの口を糖の含まれた液につけると、オレンジ色の密生した毛を持った口器を長くのばす様子が観察されますが、コカブトムシは、そのような口器は出てきません。一方、左右に分かれた小さな顎を持っており、その顎で食べ物を挟んで噛み砕くようにして昆虫ゼリーや肉を食べている様子が観察されました。

いつ活動するの?

基本的には、夜行性だと言われていますが、カブトムシが夜になると明らかに活動的になるのに対し、コカブトムシは、少なくとも飼育下では、夜になってもそれほど活動的になるという感じではありません。昼間も夜も、同程度に活動したり休息したりしている印象です。

生活史

成虫は、半年から1年半ほどの寿命があり、カブトムシが半年しか無いのに比べると長いです。
成虫は、卵を遅くとも7月末までに生みます。カブトムシは、晩秋であることが多いですが、カブトムシと異なり、コカブトムシは成虫で越冬するため、7月末以降に卵を生んでしまうと、暖かいうちに成虫まで成長できなくなってしまうためです。幼虫の成長は非常に早く、卵から生まれると2ヶ月ほどで成虫になります。幼虫の期間が短いため、年に2,3回発生していると考えられています。幼虫は、広葉樹の朽木を食べて育ちます。秋頃に成虫になったものは、次の春まで、朽木の中で越冬します。

どうやったら見つかるの?

コカブト

カブトムシは、ほとんど樹液しか食べないため、樹液の出る木を探せば見つけられますが、コカブトムシは、基本的には肉を食べるため、餌場がありません。光に寄って来る習性も無くはないようですが、捕まえられる頻度はそれほど高くないようです。また、一般に個体密度も低いと言われています。そういう点で、積極的に探して見つけるのが難しい生き物です。頻度は低いですが、樹液や外灯にやってきたものが見つかるか、地面をたまたま歩いているものが見つかることが多いようです。ちなみに、私は、昼間に紅葉の木の根本のうろのようになったところにいるのを、たまたま見つけました。幼虫が広葉樹の朽木を食べることから、もしかしたら、成虫になってでてきたものを見つけたのかもしれません。