ヒマワリの花は、実は太陽を追いかけない。

2020年8月10日 ALL生物
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ヒマワリはいつも太陽の方向を向いていることから「向日葵(ヒマワリ)」と呼ばれるようになった、という話は有名ですが、実はヒマワリが動くのは花を咲かせる前の伸長成長をしているときで、ちょうど花を咲かせる頃に動かなくなります。今回は、ヒマワリはどのようにして太陽を追いかけるのか、また、そのことにどんなメリットがあるのかについてのお話です。

ヒマワリは、どんなふうに動いているのか。

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ヒマワリは、日の出の前に東を向いてスタンバイし、太陽が上り始めるとその光の方向に合わせて東から西へ向きを変えます。そして、夜の間にまた、西から東の方へ向きを変え、日の出を待ちます。この動きをするのは、伸長成長をしている時期で、花を咲かせると、東に向きを固定しほとんど動かなくなります。

ヒマワリが向きを変えるメカニズムは?

光の刺激と、サーカディアンリズム(概日リズム)が関与しています。太陽がのぼっている間は、植物ホルモンであるジベレリンの一種が光が当たった方と反対側の茎だけを成長させるため、茎は、太陽の方向に倒れます。日が沈むと、今度は外界の刺激とは関係なく、昼間とは反対側の茎を成長させることにより、茎は夜の間にまた東の方向に戻ります。この夜の動きは、サーカディアンリズムが関与していると考えられています。サーカディアンリズムとは体内時計とも言われ、生物が持っている24時間周期の生理現象です。このリズムは、一般的に外的な刺激によって補正され、ヒマワリも光を感じることによって、24時間周期のホルモン分泌に伴った茎の屈曲を維持していることが明らかになっています。ジベレリンが分泌されない突然変異体のヒマワリは、光を追いかける習性と伸長成長が同時に無くなります。

なんのために若いヒマワリは、太陽の方向を向くのか。

ヒマワリは、太陽の方を向くといいますが、どちらかというと、体を傾けるといった方が正しいかもしれません。ヒマワリは、花を咲かせる前の成長期に、若い葉が付く茎の先端部分を太陽の方に傾けます。この動きにより、より多くの光を葉に当てることができます。ヒマワリを太陽の方向に向けないように固定すると、個体全体の乾燥重量が13%減少し、葉の面積も9.7%減少したという研究結果が得られています。つまり、ヒマワリは、たくさんの太陽エネルギーを得て光合成をし大きく育つために、小さい頃から太陽を追いかけているのです。

なんのためにヒマワリの花は、東に向いて止まるのか。

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ヒマワリの花を西向きにすると、東向きにした場合に比べて訪れる昆虫が減少しました。
ヒマワリの花は、東を向くことによって朝日を浴び、早朝から花の温度を上昇させることができます。花を訪れる昆虫は、気温が低い時には、暖かい花に好んで訪れる習性があることが報告されています。ヒマワリを訪れる昆虫も、夜間に下がった体温を上げるために早朝は、暖かい花を好んでいると考えられます。西向きにしたヒマワリをヒーターを用いて東向きのヒマワリと同様の温度に熱すると、訪れる昆虫の数が増加しました。このため、花が東向きであるのは、朝日でヒマワリの花を温め、多くの訪花昆虫を呼ぶということが理由の一つではないかと考えられています。

参考文献: Atamian HS, Creux NM, Brown EA, Garner AG, Blackman BK, Harmer SL. Circadian regulation of sunflower heliotropism, floral orientation, and pollinator visits. Science. 2016;353(6299):587-590.