多くの植物は色とりどりな花を咲かせます。雑草として扱われることの多いヨメナやツユクサ、庭木として人気の高いハギやサザンカが私達の眼を楽しませてくれます。
ところで、どうして花は美しいのでしょう?もちろん、私達ヒトのために咲いているわけではありません。じゃあ、花に訪れる虫や鳥の眼を喜ばすため?それもちょっと違います。今日は、花がどうして美しいかについてお話しようと思います。
何が花粉を運ぶ?
花と言ったら多くの場合、ツバキやヒマワリのような美しいものを想像します。でも、花は必ずしも色鮮やかで見るからに美しいものとは限りません。多くの人を悩ませるスギ花粉症、その花粉はスギの雄花がばらまきます。そして、スギの花はとっても地味。スギ以外でも、樹木だとマツやブナ、草本だとヨモギやイネの花は一見した所、花とは思えないほど地味です。
一方で、冒頭に上げた草花は色とりどりの花を咲かせます。この違いは、花粉の媒介者によるものです。地味な花を咲かせるスギやヨモギなどの花粉は風によって運ばれます。一方、ツバキやヒマワリは昆虫や鳥などの生き物が花粉を運びます。多くの花粉を運ぶ生き物は、色や形を見分けることができる眼を持っています。そのような生き物が、花を見つけ覚えやすいようにするために、花は葉や土とは異なる色であると解釈できます。
色々な送粉動物
以下に示すように、実に幅広い分類群の生物が、送粉に関わっています。
昆虫
多くの植物の送粉者は昆虫です。その中でも、ハナバチやチョウ、ハナアブは多くの植物にとって重要な送粉者であると言われています。
また、最近では、ハエ(ハナアブ以外のハエ目昆虫)の送粉者としての重要性も指摘され始めています。
意外なところでは、ヤッコソウの送粉にゴキブリが寄与していることが確認されています。
鳥
熱帯域ではハチドリやミツスイの仲間が多くの植物の送粉に寄与しています。日本にはこれらの仲間はいませんが、ツバキの送粉にはメジロが寄与していると言われています。その他
ランの一種で、ナメクジが花粉を運ぶことが報告されています。また、沖縄に生えているイルカンダの送粉にはコウモリが寄与しています。更に意外なところでは、花蜜を吸いに来たオカヤドカリが送粉者としての機能を果たす可能性も指摘されています。