![](https://biome.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/TG_20210831_P8311490-scaled.jpg)
アリっぽいけどよく見ると脚が8本。それはアリではなく、クモです。アリに擬態したクモ、その名もアリグモ。今回は、アリグモについてのお話です。
アリグモとは?
アリグモは、ハエトリグモ科アリグモ属に属するクモの総称、もしくは、Myrmarachne japonicaというアリグモ属のアリにつけられた和名です。名前の通り、アリに擬態しており、見た目も行動もアリに似ています。
一番前の脚を高く上げて、触覚のように動かします。
![アリグモ](https://biome.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/TG_20210831_P8311510-1024x768.jpg)
よく見ると目が沢山あります。
アリグモが歩く様子。前にある2本の脚をせわしなく動かし、アリの触覚のように見せかけています。
クモは好んでアリに擬態する。
![アリグモ](https://biome.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/TG_20210902_P9020527-768x1024.jpg)
ベランダのパッションフルーツに住み着いたアリグモ
他の生物に擬態しているクモの仲間は数多く居り、そのうちの80%がアリ擬態と言われています。アリに擬態したクモは13属300種以上が知られており、ハエトリグモ科、フクログモ科で何回かアリに擬態する進化が独立して起こったと考えられています。アリ擬態は、ハエトリグモ科のクモに多く、その中の14属にアリに擬態している種が含まれています。アリに擬態したクモは、無脊椎動物、鳥、爬虫類、両生類の捕食を免れやすいと考えられています。
クモがアリに擬態することの意味
アリがカマキリやクワガタのように大きな武器らしいものを持っているようにも見えないため、私たち人間からしてみるとクモがアリに擬態したところで強そうに見えることはほとんどないと思います。ですが、昆虫を捕食する生物からするとアリとクモは、大きな差があるようです。
単独で行動するクモに対し、アリは集団で行動するため、敵に遭遇したときに集団で襲いかかります。また、種によっては針で刺したり、ギ酸をはじめとする毒で攻撃したり、アゴで噛み付いたり、攻撃手段もほとんどの種についてアゴでの攻撃しかないクモに比べると多いと考えられます。
このように、捕食者から逃れるために他の生物に似せる擬態様式をベイツ型擬態といいます。ベイツ型擬態をしている生物は、身近にもたくさんおり、例えば、カバマダラに擬態したツマグロヒョウモンや、ハチのような縞模様をもったハナアブなどがあります。
![ツマグロヒョウモンのメス](https://biome.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/9b298d0f5148047fef3a404ea49fcf92-1024x683.jpg)
カバマダラに擬態したツマグロヒョウモンのメス
![ハナアブ](https://biome.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/a998338784982ff13da56dec300f9c57-1024x768.jpg)
ハチ擬態と考えられるハナアブの一種
![ハナアブ](https://biome.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/9c1205bcbf0682596639fec0f3ee6f67-1024x768.jpg)
ハチ擬態と考えられるハナアブの一種
ハエトリグモの敵はハエトリグモ
![アダンソンハエトリ](https://biome.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/de49afa5329a7caf97072b61f7c93f20-1024x768.jpg)
アダンソンハエトリ
ハエトリグモはアリに擬態することにより、別のハエトリグモに襲われにくいことを示唆する研究があります。ハエトリグモがハエトリグモを襲うことはよくあると考えられており、ハエトリグモの食べ物の5〜10%が他のハエトリグモであったという研究もあります。また、ハエトリグモが視覚のみを利用して獲物の種類を識別しうると考えられており、アリ擬態のハエトリグモは擬態していないハエトリグモに比べて他のハエトリグモに攻撃されにくく、被捕食率も低くなるということが明らかになっています。これらのことから、ハエトリグモは、他のハエトリグモに襲われないようにするためにアリに擬態している側面があると考えられています。
【引用文献】
Huang, J. N., Cheng, R. C., Li, D., & Tso, I. M. (2011). Salticid predation as one potential driving force of ant mimicry in jumping spiders. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 278, 1356–1364. https://doi.org/10.1098/rspb.2010.1896