南国のテイストのアオスジアゲハ

2022年5月25日 ALL生物

アオスジアゲハは、黒地に水色の筋が美しいチョウです。どことなく南国の雰囲気をまとうアオスジアゲハ、実は本当に熱帯域にも分布しています。

アオスジアゲハとは?

アオスジアゲハ Graphium sarpedon は、アゲハチョウ科アオスジアゲハ属のチョウです。ナミアゲハ Papilio xuthus やクロアゲハ Papilio protenor など、日本に生息するアゲハチョウ亜科 Papilioninae の多くははアゲハチョウ属に属しますので、アオスジアゲハとは分類群が少し異なります。幼虫は、クスノキ、タブノキなどのクスノキ科の植物を食草にします。しかし、バンレイシ科のポーポーや、バラ科のヤマザクラ、モクレン科のオガタマノキやタイサンボク、ミカン科の植物などに幼虫が付いたという報告もあるようです。

アオスジアゲハ幼虫

アオスジアゲハの幼虫

他のアゲハチョウ科と比べると動きが俊敏で、ナミアゲハであれば花の蜜を吸いに来たところを帽子でも捕まえられますが、アオスジアゲハにはよく逃げられます。また、他のアゲハチョウの仲間よりも高いところを飛んでいることが多いように感じられます。

アオスジアゲハの分布域

アオスジアゲハ

真っ黒の地にパステルカラーの青い筋のある柄は、日本の本州で普通に見られるアゲハチョウ亜科の中で一際個性的です。アオスジアゲハは、西はスリランカ、インドから東はニューギニア、オーストラリアまでの東洋熱帯が分布の中心であり、日本の本州は分布の北限です。日本では、本州中部以南の平地から山地帯では普通にみられますが、中部地方や関東地方の山間地帯では少ないです。分布の北限は、太平洋側では岩手県、日本海側では秋田県です。

アオスジアゲハが好む花

アオスジアゲハは、他の日本に生息するアゲハチョウ亜科の仲間と比べて少し小ぶりです。そのため、口吻の長さが短いのか、訪れる花の傾向も他のアゲハチョウ科のチョウとは少し異なるように思われます。春先には、頻繁にネギ坊主の花の蜜を吸っている姿を見かけます(参考: ネギ坊主に集まる昆虫たち)。夏には、ヤブカラシの花によく集まります。

アオスジアゲハ

ヤブカラシの花の蜜を吸うアオスジアゲハ

これらの花は、他のアゲハチョウ科がよく集まるツツジのような形の花と比べると蜜のある部分が奥まっておらず、蜜を吸うのに長い口吻を必要としません。アオスジアゲハは、このような蜜腺が比較的奥まっていないところにある花に好んで訪花するのではないかと考えられます。