世界中で分布を広げるクビアカツヤカミキリ

2022年6月7日 ALL生物
クビアカツヤカミキリ Photo by ぽこたぬき

前回に続いて今回もクビアカツヤカミキリについてのお話です。今回は、クビアカツヤカミキリがどこからどのようにやってきて、どうやって日本で広がっているのかについてです。

どこからどのようにやってきたの?

日本にどのように持ち込まれたのかについては明らかになっていませんが、海外では、梱包材やパレットに穿孔していた幼虫が運ばれてきたことが確認されています。日本への侵入についても同様の経路であると推測されます。

木製パレット

パレット Photo by Dbenbenn, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

クビアカツヤカミキリは、2008年にアメリカやイギリスの検疫で見つかり、2011年にドイツでセイヨウスモモでの被害が、2012年にイタリアでセイヨウスモモ、アンズ、モモでの被害が報告されました。日本では、2012年に愛知県のサクラで初めて発見され、2015年に徳島県、2016年に大阪府へと広がり、現在では12都府県で侵入が確認されています。侵入時期が世界中でほとんど同じであることから、移入元(特定されていないが、クビアカツヤカミキリは中国、ロシア、ベトナム、モンゴルなどに自然分布する)の輸出量の増加が影響していると考えられています。

日本はクビアカツヤカミキリとって生息に好都合な環境

サクラは街路樹や公園の植え込みなどとして好んで植栽されており、日本中サクラだらけです。クビアカツヤカミキリは、船で海外から運ばれてくると考えられており、その場合、港や荷物の到着場所である工場などにまず運ばれます。その近くにサクラが植栽されていることは珍しくありません。そのため、クビアカツヤカミキリは簡単に産卵場所を見つけることができます。

サクラ

また、バラ科の立木を専食するカミキリムシの仲間は日本には生息しておらず、クビアカツヤカミキリと競合する種が少ないことも、日本で広がりやすい要因になったと考えられます。その上、北ベトナムからロシアまで自然分布するクビアカツヤカミキリは、気候の面からも、日本での生息に大きな困難は無いものと考えられます。

分布拡大させないために

クビアカツヤカミキリは樹木の材の中に入り込むため、捕殺するのが難しく、殺虫剤も届かないことがあります。そのため、寄生木から幼虫を完全に排除するのは困難な場合が多いです。したがって、寄生された木を切り倒し、焼却処分するのが最も確実な方法だと言われています。

クビアカツヤカミキリの防除

樹木を切り倒せない場合は、木の根元に網を巻き、成虫が外に飛び出さないようにすることによって他の木が寄生されないようにする処置が施されます。