畑の脇の竹垣から、カリカリカリと音が聞こえてきました。その音の発生源は、なんとアシナガバチでした。
竹をかじるアシナガバチ
5月から6月にかけて、セグロアシナガバチが古い竹垣に止まってはどこかに飛んでいってはまた帰ってきくるという行動をしていました。一回の滞在時間は数分程度です。よく観察してみると、顎を使って竹の表面をかじりとっているようでした。
アシナガバチの巣作りに使われる植物の繊維
巣作りの素材として、スズメバチが主に樹木の表皮を使うのに対し、アシナガバチはそれよりも内側の繊維を使います。そのため、木で作られたテラスやベランダの柱などは、人が切り出して樹木の内側の材が露出しており、特に劣化して表面が少し脆くなったものであればアシナガバチの格好の巣材になることがあるようです。今回観察したアシナガバチについては、半分に割った竹の内側ではなく、外側を削っていました。生きている竹の表面は非常に堅いですが、伐採されたあと長年風雨に晒され劣化したものであれば、内部の繊維が表面に露出し、アシナガバチが利用できるほど繊維が剥がれやすくなるようです。
スズメバチが、土の中や木のうろ、またはボール状の外壁で覆った巣の中に幼虫を育てるための育房を作るのに対し、アシナガバチは育房が露出した巣を作ります。一見弱々しい印象を受けるアシナガバチの巣ですが、木の内側の材にこだわって作られた巣はかなり丈夫で、風雨に晒されてもなかなか壊れません。ちなみに、ミツバチは巣作りに植物の繊維は使わず、働き蜂の蝋分泌腺から出される蜜蝋を用いて巣を作ります。
アシナガバチの子育て
アシナガバチは、4月〜5月頃から女王一匹で巣を作り始め、3部屋ほど作った時点で卵を生みます。卵は、孵化するまで約20日、幼虫期間約10日、サナギ期間約15日を経て成虫になります。そのため、新しい成虫(働き蜂)が外に出てくるのは6月頃になります。それまでは女王一匹で、巣作り、産卵、幼虫への餌やりを行います。幼虫には、芋虫や毛虫を噛み砕き、肉団子にして与えます。一方、成虫はヤブガラシやナンキンハゼなどの花蜜を利用します。