真夏の真っ昼間の道路脇、せっせと働くクロアナバチ

2022年8月31日 ALL生物

真夏の真っ昼間、一刻も早く立ち去りたいと思うほど暑い道路の脇で、せっせと土木工事をする生き物を見つけました。遠目には、大きなアリの女王かと思う真っ黒な姿、クロアナバチでした。

クロアナバチとは?

クロアナバチ

クロアナバチ Sphex argentatus は、膜翅目アナバチ科のハチです。体長が25〜30mmほどあり、比較的大きなハチです。細長い腰(腹柄節)は、地面にとまっている時は暗褐色の羽で隠れており、大きなアリのようにみえます。アフリカから東アジア、オーストラリアにかけて広く分布します。日本では全土に生息します。

クロアナバチが穴を掘る様子

市街地の幹線道路沿い、街路樹として植えられているシラカシの根本に巣を発見しました。乾燥した砂地で、非常に硬そうな地面でした。

クロアナバチの巣

クロアナバチが巣を作っていた道路脇の街路樹の下

1分間に1回から2回の頻度で、土を外に運び出していました。土は、口元でうまく団子状に丸められて運ばれているように見えましたが、口を放すとすぐにパラパラと形を失いました。土は、穴からまっすぐ出て15cmほど離れた場所に盛られていました。↓

どうして穴を掘っているのか。

クロアナバチは、穴の中に、キリギリス科の昆虫を麻酔をかけた状態で入れ、そこに卵を生みます。獲物に麻酔をかけ、生かさず殺さずの状態で放置することにより、幼虫が卵から生まれて獲物を食べ始めるまで、獲物を腐らせることなく保つことができます。また、穴に入れて隠すことで獲物が他の生き物に取られるのを防ぎます。

きちんと埋め戻す

掘る作業が終わると、今度は、すぐにせっかく掘った穴を埋め始めました。まるでネコが猫砂を引っ掻いて排泄物を埋めるときのように、前足で砂を引っ掻いてすっかり穴がわからなくなるまで埋めてしまいました。↓

飛び立ったクロアナバチは、すぐにその場から離れず、しばらくそのあたりをフラフラと飛んでは、巣の近くに戻ることを繰り返しました。この行動は、orientation flight(定位飛行)と呼ばれ、クロアナバチによく見られる行動です。再び巣に帰ってこられるように、付近を観察し、巣の場所を記憶していると考えられています。↓
クロアナバチが出入りしていた穴の周りには、少なくとも2個の穴があいていました。クロアナバチは、本物の巣穴の周りにダミーの穴を作る習性があると言われており、おそらく、この2つがダミーの穴であると思われます。

クロアナバチがダミーの穴を掘るところ

巣の穴の入り口を埋めた後、定位飛行を始める前に、左上のダミーの穴からも数回土を運び出した。

次回は、クロアナバチの巣の内部の構造や、ダミーの穴の意味についてお話したいと思います。