クマゼミを食べるオオカマキリ

2022年9月16日 ALL生物

夏の終わり、レモンの木の上から、断続的にパタパタパタと音が聞こえてきました。なんの音だろうとその主を探してみると、クマゼミの必死の抵抗の音でした。

クマゼミを襲うオオカマキリ

オオカマキリ Tenodera aridifolia に襲われていたのは、クマゼミCryptotympana facialis のメスでした。クマゼミは、成虫の体長が6〜7cmほどになり、日本の本州に生息するセミの中では最大種です。また、意外と足の力が強く、前足には棘もついており、暴れるセミを押さえつけるのは相当な力が必要だと考えられます。オオカマキリはクマゼミの翅の付け根を両腕でガッチリと掴んでおり、セミが翅をバタバタさせても、ほとんどセミの体は動きません。カマキリは、セミの頭部の根本近くをかじっていました。

クマゼミを捕食するオオカマキリ
クモやハチなどには、毒を注入し、獲物の動きを止めてから摂食する種もいますが、カマキリはそのような毒を持たないため、力ずくで獲物を押さえつけて捕食します。食べていくうちに獲物は動きを止めます。脳がある頭部に近いところから摂食を始めるのは、獲物が抵抗する時間を減らすために意味があるのかもしれません。また、オオカマキリはスズメバチを襲うこともありますが、スズメバチは強力な顎を持っているため、頭を後ろから押さえつける必要があります。こういった場合も摂食は頭に近いところからおこなうことになります。

どうしてレモンの木でクマゼミが襲われたのか

クマゼミを捕食するオオカマキリ

クマゼミは、サクラやケヤキ、センダンなどの木によく止まります。また、セミは一般に太い幹や枝にとまって口吻を差し込み汁を吸います。今回、このオオカマキリは、レモンの木の先の細い枝の部分でクマゼミを食べていました。クマゼミは樹液を吸うためやってきたのではなく、たまたま止まったレモンの細い枝で捕まえられてしまったのかもしれません。

ナミアゲハ

一方、柑橘類であるレモンには、アゲハチョウの仲間が産卵にやってきます。卵から生まれたアゲハチョウの幼虫は柑橘の葉を食べて育つため、オオカマキリは、アゲハチョウの成虫だけでなく幼虫も柑橘上で捕食できるチャンスがあります。

それに加えて、緑の柑橘の葉の中に身を置くことで、緑色のオオカマキリは鳥などの捕食者から見つかるリスクを低減できる可能性があります。緑のオオカマキリにとって、レモンの緑の葉っぱの中は、捕食を免れつつ餌にありつけうる良い狩場なのかもしれません。