タマシギのパパはイクメン

2022年10月31日 ALL生物
Photo by Mprasannak from Wikimedia Commons

前回は、タマシギはオスのみが子育てをするゆえに、オスがメスを選ぶようになり、メスは派手に進化したという話をしました。今回は、タマシギはどうしてオスだけが子育てをするようになったのかについてのお話です。

なぜ多くの生物はメスが子育てをするのか

哺乳動物や鳥類の中でもオスだけが子育てをする種は非常に珍しいです。メスにとって、自分が産んだ卵や子供が、自分の遺伝子を持っていることは確実です。ところが、オスにとっては、つがいのメスが自分の遺伝子が入った卵や子を生んだという確証を得ることは非常に難しいです。このことが、オスだけが子育てをする生物が少ない要因のひとつだと考えられます。

例えば、ツバメの場合雌雄ともに子育てをしますが、全巣のうちの3割に、つがいのオスの子ではない雛が含まれており、調査した全雛のうちの15%の雛は他のオスの遺伝子を持っていたという研究報告があります。

ツバメの雛このようなメスの浮気は、ツバメだけでなく多くの生物種で見つかっています。

なぜタマシギはオスのみが子育てするのか

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タマシギのオスと子 Photo by Charles Lam from Hong Kong, China, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

タマシギは、つがいになってからメスが卵を生むまで、観察時間中のほぼ100%、5m以内に雌雄がいることが報告されています。このことは、子育てをするオスにとって、メスに浮気をさせないことが非常に重要であり、メスにとっても、自分が生んだ卵を放棄せずに育ててもらうために自分が潔白であることを証明する必要があるためだと考えられます。つがいのメスが生んだ卵に自分の遺伝子が入っている可能性が高いとオスが確信を持てば持つほど、オスは子の世話を熱心にするようになると考えられます。

そもそもメスが子育てをしなくなった理由については、営巣場所が湿地や水田跡であるため、洪水によって子育てが失敗することが多く、メスは繁殖シーズンの間にできるだけ何回もいろいろな巣で卵を生んだ方が、一つの巣の卵に固執するよりも適応的だったからではないかという仮説があります。メスが卵をたくさん生むために子育てにかかるコストを減らしていった結果、子育てをするオスとの間に生まれた卵の生存率が、子育てをしないオスとの間に生まれた卵の生存率よりも高くなり、どんどんメスは卵を生むだけ、オスが世話をするという傾向が強くなっていったのではないかと考えられます。

[参考文献]
米田重玄, 2015, タマシギの繁殖生態「一妻多夫?」, available at:  https://www.yamashina.or.jp/hp/yomimono/tamashigi.html