ソメイヨシノより一足早いカワヅザクラ

2023年3月15日 生物

カワヅザクラは、ソメイヨシノよりも数週間早く春の訪れを知らせるサクラです。今回は、カワヅザクラがどのように生まれ、どのような特徴をもっているのかについてのお話です。

カワヅザクラとは?

カワヅザクラ

カワヅザクラ

カワズザクラCerasus × kanzakura ‘Kawazu-zakura’ はオオシマザクラ Cerasus speciosa とカンヒザクラ Cerasus campanulataが自然交雑してできたサクラです。静岡県の河津川沿いで1955年にたまたま発見され、発見者が庭に植えたものが広がりました。

オオシマザクラとカンヒザクラの特徴

オオシマザクラ

オオシマザクラ Photo by SLIMHANNYA, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

オオシマザクラは、伊豆諸島に自生する野生種です。花期は3月下旬から4月上旬頃です。サクラの代表種のソメイヨシノも雑種由来の品種で、このオオシマザクラが花粉親です。

カンヒザクラ

カンヒザクラ:セイヨウミツバチが訪花している。

カンヒザクラは、台湾、中国南部に分布する野生種です。日本では、石垣島に野生で生育しているものがあります。ただ、人為的に持ち込まれたものが野生化した可能性も否定できず、日本に自生地があるかどうかははっきりしていません。沖縄では、ソメイヨシノやヤマザクラが生育しないため、カンヒザクラがよく植えられます。花期は1月〜3月頃で、比較的早い時期に咲きます。日本のソメイヨシノやヤマザクラなどと比べて、濃いピンク色の花を咲かせます。

カワヅサクラの特徴

カワヅザクラ

カワヅザクラ

カワズザクラはソメイヨシノよりも数週間早く咲き始め、濃いめのピンク色です。これらの特徴は、カンヒザクラの形質をよく残しているためだと考えられています。植物の開花時期は、その送粉者の活動時期に影響されます。例えば、本州に自生するヤマザクラでは、3月下旬頃から花を咲かせる地域が多いです。サクラの仲間は、主にハチやハエなどの昆虫に花粉を運んでもらうため、それらの生物が活発に動き始める時期を狙って花を咲かせていると考えられます。

カワヅザクラ

カワヅザクラ:ミツバチが訪花している。

カワヅザクラはそれよりも早く花を咲かせます。本州で訪花昆虫を呼ぶには、あまり適した開花タイミングとは言えないと考えられます。カワヅザクラは、もともと、人為的に作られた品種ではなく野生種同士の自然交配で生まれた雑種ではありますが、ヒトに気に入られ、栽培されなかったら増えることはなかったものと考えられます。