赤耳じゃなくてもアカミミガメ
亜種のミシシッピアカミミガメがよく知られているアカミミガメが2023年6月に条件付特定外来生物となりました。今回は、アカミミガメの3亜種の特徴と、規制の内容を紹介します。
アカミミガメとは?
アカミミガメ Trachemys scripta は北米原産のヌマガメ科のカメです。ミシシッピアカミミガメTrachemys scripta subsp. elegans、キバラガメTrachemys scripta subsp. scripta、カンバーランドキミミガメTrachemys scripta subsp. troostiiの3亜種に分けられ、それぞれ原産地での生息域が異なります。日本でよく見られるのはミシシッピアカミミガメです。
ミシシッピアカミミガメ以外の2亜種については、日本ではあまり知られていません。キバラガメ、カンバーランドキミミガメともに、種としてはアカミミガメですが、「赤耳」の部分はなく、黒地に黄色い模様もしくは、茶色い模様(カンバーランドキミミガメ)があります。ちなみに、ミシシッピアカミミガメも大きくなると赤い部分が消失します。ミシシッピアカミミガメに比べると少数ではありますが、キバラガメもカンバーランドキミミガメも愛玩用に日本に持ち込まれ販売されていたこともあり、野外で発見されることがあります。したがって、野外で見つけたカメの顔に赤い模様がないからといって、アカミミガメではないとは限りません。ミシシッピアカミミガメと同所的によく見られるイシガメは甲羅の後ろ部分がギザギザしており、クサガメは甲羅のキール(隆起した部分)が3本あることからなどが同定のポイントとなります
条件付特定外来生物と特定外来生物の違い
2023年6月1日より、アカミミガメ (ミシシッピアカミミガメ、キバラガメ、カンバーランドキミミガメ)、アメリカザリガニが条件付特定外来生物に指定されました。この2種が条件付特定外来生物として指定された初めての種です。
特定外来生物は、飼育、輸入、譲渡、放出(野外に逃がすこと)すべてが禁止されています。一方、条件付特定外来生物はそのうちの一部の行為が禁止の対象から除外されます。アカミミガメとアメリカザリガニについては、販売、頒布目的での飼育は禁止されますが、一般家庭での飼育、水族館、学校などでは特別な許可を得ること無く飼育することができます。また、売買と頒布(不特定多数へ配る行為)でなければ、譲渡は認めらています。一方、無許可での輸入や放出は特定外来生物と同様禁止です。
どうして「条件付」の特定外来生物が指定されたのか
アカミミガメ、アメリカザリガニが通常の特定外来生物ではなく「条件付」の特定外来生物に指定されたのは、外来生物としての問題が特定外来生物と比べて小さいと想定されるからではありません。現在、すでに飼育している人が多いこの2種を通常の特定外来生物と同様に飼育禁止にすると、むしろ野外放逐する人が増えることが想定されるため「条件付」の指定となりました(2019年時点、アカミミガメ飼育数110万世帯160万匹)。広く飼育されていることを鑑みた特別な配慮に過ぎません。何らかの事情で飼育が困難になったからと言って、決して放逐してはいけませんし、そのような状況になる恐れがあるなら飼育を始めるのも控えねばなりません。これら2種についても、条件付きでない特定外来生物と同程度に日本国内でこれ以上生息場所を広げないようにすることが環境保全のために非常に重要です。
参考文献:
環境省. 日本の外来種対策 2023年6月1日よりアカミミガメ・アメリカザリガニの規制が始まります!. https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/regulation/jokentsuki.html#02