ナナフシかと思いきや実は違ったカカトアルキ

2023年10月7日 生物
Mantophasma zephyra Photo by P.E. Bragg via Wikimedia Commons

昆虫で新しい目が追加されることは、そうそうあることではありません。カカトアルキ目は最も最近に認められた昆虫の目で、ガロアムシ目以来、実に88年ぶりの新目です。一体どんな昆虫なのでしょう。

カカトアルキとは?

カカトアルキ

Photo by Michael F. Schönitzer from Wikimedia Commons

カカトアルキは、昆虫綱カカトアルキ目 Mantophasmatodea に属する種の総称で、3科8属15種(2007年現在)が含まれます。体長は約2cmほどで、翅はありません。Mantophasmatodeaという目名は、カマキリ目 Mantodea とナナフシ目 Phasmatodea をくっつけたものです。その両目に似た外見ですが、DNA解析から、現在はガロアムシ目と最も近縁ではないかと考えられています。

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ガロアムシの一種 Photo byMarshal Hedin from San Diego, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

88年ぶりの新しい目

昆虫は、動物界・節足動物門・昆虫綱に属する生物を指します。綱の一つ細かい分類群が目で、昆虫綱にはチョウ目、ハチ目、バッタ目、カマキリ目、ゴキブリ目などに分けられます。生物は、目に続け、科、属、種というより細かい分類群に分けられます。目レベルで異なる生物は、系統的にはかなり異なる生物であると言えます。カカトアルキ目が昆虫綱に追加されたのは2002年のことで、1914年のガロアムシ目以来、88年ぶりのことです。

カカトアルキという名前の由来

カカトアルキは、すべての脚の先を持ち上げて歩くという非常に特徴的な歩き方をします。まるで、踵(かかと)であるいているような格好であるため、heel-walkerという名前がつけられ、その和訳がカカトアルキ目もしくは踵行目です。なんのために踵で歩くのかについてはよくわかっていないようです。

どこに住んでいるの?

生きたものが見つかったのは、アフリカ大陸の南西端、ナミビアから南アフリカに位置する乾燥地帯ナマカランドという場所です。平均気温20℃弱、年間降水量約200mm(ちなみに東京だと15.8℃、1600mm)の非常に乾燥した地域で、9月中旬から6月頃までほとんど雨が降りません。タンザニアで1950年に採取された標本があるものの、近年では生きた個体は見つかっていません。

カカトアルキの生態

カカトアルキは7月頃の降雨をきっかけに、卵から孵化し、8月中旬から下旬に繁殖期を迎えます。雨が降る期間が非常に短いため、植物もこの期間に一気に成長して花を咲かせ、他の昆虫の活動もこの期間に集中します。カカトアルキは不完全変態で卵から生まれてから4度の脱皮をしますが、成虫になるまでに1ヶ月かかりません。肉食性で、シミ、ハエ、チャタテムシなどを捕獲して食べます。交尾は平均3日間も行われます。おそらく、オスが他のオスにメスを取られないようにするため(交尾後ガーディング)だと考えられています。カマキリと同じく、交尾後メスがオスを食べてしまうこともあるようです。メスは、土中に10〜12卵ほどの砂で固めた卵塊を数回生みます。卵塊は、乾燥するとペンチでも潰れないほど固くなり、9ヶ月ほど土中で乾燥に耐えます。降雨によって卵塊が崩れると孵化します。

【参考文献】

東城幸治. カカトアルキのなぞ 世紀の発見88年ぶりの新昆虫. 新日本出版社. 2007