サツマイモで見つけた国内外来のハムシたち

2023年12月9日 生物

サツマイモ畑で見慣れないハムシを2種見つけました。調べてみるとタテスジヒメジンガサハムシとヨツモンカメノコハムシのようです。両種とも元々南方系の種のようですが、近年国内で分布を拡大しています。

タテスジヒメジンガサハムシとは?

タテスジヒメジンガサハムシ

タテスジヒメジンガサハムシ

タテスジヒメジンガサハムシ Cassida circumdataは、甲虫目ハムシ科の体長4〜5ミリほどの昆虫です。国外では、中国南部、台湾、フィリピン、インドネシア、タイ、インド、ハワイなどで生息が報告されています。国内では、琉球列島、種子島、屋久島、小笠原の中硫黄島に生息することが知られていましたが、2004年には東京都八丈島、2012年には大阪府、2020年には奈良県、2023年には千葉県で初めて発見されており、近年国内で分布が拡大しています。

何を食べるの?

サツマイモ

サツマイモ

食草はヒルガオ科のサツマイモ、ハマヒルガオ、クウシンサイ、アサガオを食べることが報告されています。野菜に大量発生すると、収量が減るおそれがありますが、幼虫、成虫ともに食べるのは地上部のみのため、サツマイモに対しては影響は小さいのではないかと考えられています。

ヨツモンカメノコハムシとは?

ヨツモンカメノコハムシ

ヨツモンカメノコハムシ

ヨツモンカメノコハムシLaccoptera quadrimaculataは、ハムシ科ヨツモンカメノコハムシ属の昆虫です。国外では、中国南部、台湾、インドネシア、インド、マレーシア、タイなどユーラシア大陸南東部から東南アジアに分布し、国内では、1980年代頃まで琉球列島でのみ知られていました。しかし、1990年代に九州で、2000年代に本州では初めて静岡で確認されました。2010年代には、高知、愛媛、大阪、和歌山、三重、愛知、神奈川、東京などでも確認されるようになり、近年分布域を拡大し続けています。

何を食べるの?

マルバルコウ

マルバルコウ

成虫、幼虫ともにヒルガオ科のサツマイモ、ノアサガオ、マルバルコウ、ヒルガオ、ハマヒルガオなどを食べます。特に、サツマイモによく付くことが知られていますが、日本で収量に大きな影響を与えるほど食害を受けたケースは今のところ報告されていないようです。しかし、今後分布が拡大した地域でも同様であるかは不明なため、その影響が警戒されています。

どうしてこれらの種は分布拡大できたのか

タテスジヒメジンガサハムシ

両種とも卵や蛹がサツマイモの苗床に付着したまま運ばれ広がった可能性が指摘されています。また、ヨツモンカメノコハムシはしがみつく力が強いため、自動車や電車などにしがみついて運ばれる可能性もあると考えられています。また、これらの種は南方系の種であるため、元の分布域では低温にさらされたり、長期間食草が枯死してなくなることはそれほど無いと考えられます。そのため、北への分布を拡大には、侵入地での冬季を生き延びられるほどの低温耐性と、餌がない期間をやり過ごす能力を持っていることが要因であると考えられています。温暖化によって、分布はより北に拡大する可能性があります。

【参考文献】
重藤裕彬, 末長晴輝, 南雅之 & 渡辺晃平 (2020) ヨツモンカメノコハムシの分布記録および日本国内, 特に琉球列島における分布の現状. ホシザキグリーン財団研究報告, 23: 227–243.