冬にのみ姿を現す蛾、フユシャク
多くの昆虫は暖かい時期に活動しますが、冬にのみ成虫が姿を見せる昆虫がいます。フユシャクはその一つです。
フユシャクとは?
フユシャクは、チョウ目シャクガ科 Geometridae の中で、フユシャク亜科 Alsophilinae、エダシャク亜科 Ennominae、ナミシャク亜科 Larentiinae に分類されるものの中で、冬に活動する種を指し、40種ほどが知られています。エダシャク亜科とナミシャク亜科にはフユシャクではないものも含まれており、それぞれの亜科の中で、冬に活動する種が独立に現れたと考えられます。
どこに生息するの?
多くの種が北海道から九州に分布しますが、沖縄まで分布する種もおり、日本全国なんらかのフユシャクは生息します。また、ナミスジフユナミシャクOperophtera brumata のように、コナラやミズナラ、クヌギなどのブナ科、バラ科、ツツジ科、ニレ科などかなり幅広い種の植物を食べる広食性の種もおり、雑木林のような環境があれば、何らかの種に出会える可能性があります。冬の夜に活動するため、偶然出会うことはあまり多くありませんが、灯火に集まる習性がある種もいるため、ライトトラップを行えば見られる可能性が高い生き物です。
フユシャクの特徴
冬にしか活動しない
フユシャクは、11月から3月頃にのみ成虫が見られます。年一化で、3月から4月頃に卵が孵化し、10〜15日ほど植物の葉を食べた後に土中に潜って蛹になり、冬を待ちます。成虫は夜間に活動します。
メスには翅がない
フユシャクのメスには飛べる翅がありません。種によっては小さな翅がある種もありますが、飛ぶことはできません。お尻からフェロモンを出すことにより、オスを呼び、交尾を行います。
成虫は何も食べない
フユシャクの成虫は口吻を持たないため、一切食べ物を摂取しません。しかし、幼虫の頃に蓄えた養分で1ヶ月ほど生きることができます。ちなみに、フユシャク以外のシャクガ科の成虫は口吻をもちます。
次回は、どうしてフユシャクのメスは翅を持たないのかについてお話したいと思います。