生まれた直後に独り立ちするツカツクリ
前回は、ツカツクリが抱卵しない鳥であることをお話しましたが、ツカツクリは子育ても一切行いません。カモやシギの仲間も生まれてすぐに歩きはじめ、餌も自分で取りますが、親について歩きます。しかし、ツカツクリは、卵から生まれてすぐひとりで生活し始めます。
この記事の目次
生まれてすぐに走る・飛ぶ
ヤブツカツクリの雛は、生まれると数時間から15時間ほどかけて足で砂をかき分け、巣から自力で脱出します。脱出した雛は1時間で走ることができ、24時間で飛ぶことができるようになります。餌は自力で探し、親に世話されることは一切ありません。ツカツクリは卵が孵るまでの期間が長いです。生まれてすぐにひとりで生きていけるように、かなり成長した状態で卵から出てくるのです。このようなかなり発達した状態で卵から孵化する鳥は早成性と言われ、原始的な鳥に多いと言われています。早成性の種には、他にカモやチドリ、キジ、ツルの仲間などが含まれますが、その中でも生まれてすぐに親から独立して生活するのはツカツクリの仲間だけであり、特に早成性の特徴をもった鳥と言えます。なお、ひとり立ちまでに時間がかかるスズメやハトなどは晩成性と呼ばれます。
卵を生むだけのメス
前回の記事でお話した通り、オスは卵を温めるために大変な努力をする一方、メスは卵を生むだけで抱卵も子育てもしません。そのため、メスは一般的な鳥に比べて産んだ後に子にかけるコストが小さいです。
一方、卵は大きい傾向にあり、成鳥はニワトリほどの大きさであるヤブツカツクリの卵の大きさは、9cm×6.5cmほどもあります(ニワトリの卵は6cm×4cm程度)。
また、産卵数は同じキジ目のキジやヤマドリと比較しても同程度かそれ以上です。その上、一つの卵に占める卵黄の量も多いです。つまり、卵も雛も世話しないメスは、その代わりに大きくて栄養豊富な卵を作ることに子育てに関わる全エネルギーを注いでいるといえます。