こう見えてもカモの仲間、ミコアイサ
カモといえば嘴が平べったい鳥を想像しますが、アイサというあまりカモらしくない名がつけられたこの鳥は、カモ科でありながら嘴が平たくありません。
ミコアイサとは?
ミコアイサ Mergellus albellus は、カモ目カモ科ミコアイサ属の鳥です。ミコアイサ属に属する種はミコアイサだけです。特徴的なパンダ模様は、繁殖期のオスにだけ表れる柄です。メスと繁殖期以外のオスは上の写真のような姿です。ユーラシア大陸の高緯度地域で繁殖し、冬季にヨーロッパ、カスピ海、インド、中国、日本(九州以北)などに渡ります。
漢字では、巫女秋沙と書き、オスの白い姿を巫女の白装束に見立てたという説があります。また、秋沙は秋早くにやってくるという意味で秋早(アキサ)、もしくは、アイサがやってくる頃に秋が去る(アキサ)と言われていたのが転じたと言われています。他にアイサと名のつく日本でよく見られる鳥に、カワアイサ Mergus merganser とウミアイサ Mergus serrator がありますが、ミコアイサを含めて、「アイサ」と名につく鳥がカモの仲間の中でとりわけ秋の早い時期にやってくる傾向は無く、そう考えると後者の語源の方がしっくりきます。
急に消え、急に現れるミコアイサ
アイサの仲間は潜水して餌をとります。ホシハジロやキンクロハジロも潜水をして餌をとるカモですが、ホシハジロは、アマモやマツモなどの水中の藻類を食べ、キンクロハジロはシジミなどの貝類を主に食べます。
一方、ミコアイサは動く魚を水中で捕らえて食べます。そのためか、動きも他のカモ類に比べ俊敏に見えます。餌を取るべく水の中に頻繁に潜るのですが、少し離れたところから出てくることが多いため、どこにいったのかすぐ分からなくなります。水面をプカプカ浮いていることが多いカモの仲間よりも、どちらかというと同じように水中生物を捕らえて食べるカイツブリに動きは似ています。しかし、カイツブリと異なるのは、ミコアイサは群れを作ることが多く、潜水が他の個体と同調することです。
カモっぽくない嘴の形
カモというと、平べったくて縁の丸い嘴を持った鳥を想像することが多いと思いますが、ミコアイサの嘴は、先に向かって細くなっています。
例えば、同じように潜水して魚を捕るウの嘴は、もっと長く尖った形状をしています。ミコアイサの嘴も、魚をより効率よく捕らえるために、一般的な多くのカモに比べると細長い構造をしているのかもしれません。
他の個体とシンクロするミコアイサ
ミコアイサは十数羽が群れになることがありますが、たまたま観察していたミコアイサはオスの二羽だけでした。警戒心が強いのか、他のカモがかなり近いところまでやってくるのに比べ、ミコアイサは常にため池の真ん中あたりを泳ぎ、近づいてくることはありませんでした。観察している間、ずっと二羽で行動し、一羽が潜るともう一羽がほぼ同時に水の中に入るということを繰り返していました。
水の中で二羽がどのように動いているのか見ることができないのが残念ですが、少なくとも偶然ではなく、わざわざ同じタイミングに潜水しているのは確かなようです。群れが大きくなっても、複数羽が同時に潜水し、集団で採餌することが知られています。