早春のチョウのお話

2024年3月9日 生物

春先は日によって寒暖差が大きく、暖かくなったかと思えば次の日は真冬のような寒い日だったりします。その寒い日続きの合間のぽかぽかと日が射した束の間に、チョウの姿を見ることがあります。どうやって、三寒四温のややこしい天候に対応しているのでしょうか。

種類によって異なる越冬形態

ツマグロヒョウモン

基本的には幼虫で越冬するツマグロヒョウモン

チョウの越冬形態(卵、幼虫、蛹、成虫)は、種類によって異なります。成長して体を大きくする段階である幼虫と、一部例外はありますが、配偶相手を見つけたり産卵場所を探したりする成虫は餌を必要とします。冬季には落葉樹や多くの草本は地上部の葉を無くし、花もほとんど咲かないため、チョウの多くは採餌が困難になります。それに加え、低温時は容易には飛翔できず、餌資源を探し回ることも天敵から逃れることも難しくなります。そのため、採餌の必要のない卵や蛹の状態で越冬する種は少なくあません。

アオスジアゲハの蛹

蛹で越冬するアオスジアゲハ

卵で越冬する場合、小さなサイズゆえに冬でも活動する鳥の餌にならず、捕食を免れる利点があります。一方で、冬季に地上部が枯れてしまう植物に産卵してしまうと、葉などと一緒に地面に落ちてしまうことになります。特に草本を食草とする種の場合、適切な産卵場所が冬季には無い場合があると考えられます。

産卵するモンシロチョウ

産卵するモンシロチョウ。越冬形態は蛹。

チョウの越冬形態には、食草や、成虫になるまでに必要な成長期間、蛹や成虫の外見など、様々な要因が関与していると考えられます。

成虫で越冬するチョウ

キタキチョウ

キタキチョウ

春先の暖かい日に姿を現すキタキチョウは成虫のまま冬を越します。そのため、気温が低い早春であっても、日光で体温を十分に上げられるような日であれば姿を現します。春先にはタンポポやスミレなどが咲き始め、蜜を吸うために訪花します。早春に見られるチョウは、成虫越冬のものが多いです。

タテハモドキ

タテハモドキの翅の表側

成虫で越冬するチョウの中には、キタテハやルリタテハ、タテハモドキ、ムラサキシジミ、テングチョウなど翅を閉じるととても地味に見える種がいます。タテハモドキは夏型と秋型で翅裏の柄が異なり、夏型は目玉模様がありますが、秋型は模様が無く枯れ葉のようです。

タテハモドキ夏型

タテハモドキ夏型 Photo by nakaneta

タテハモドキ秋型

タテハモドキ秋型 Photo by まっさ

このように成虫越冬する種には、冬季に天敵に見つからないように翅の柄を工夫しているものもあります。