私のレタス。。。え、ハコベでいいの?じゃ、それで。
まだ真冬の寒さが残る2月下旬、やっと少しずつ大きくなってきたサニーレタスが青虫にむしゃむしゃと食べられてしまいました。なんの変哲もない青虫だとなかなか種同定が難しいので、大きく育ててみることにしました。
レタスを食べた青虫の飼育
2月24日
大事なレタスの葉を食べることはこれ以上は勘弁願いたいので、手元にあったカタバミ、ヒメオドリコソウ、ミドリハコベを与えてみました。すると、ミドリハコベをむしゃむしゃ食べました。ということで、ミドリハコベで飼育することにしました。
2月27日
飼育ケースの側面に繭を作り始めました。細い糸を体の周りに吐き、体の長さの1.5倍ほどの長さの繭を約1日かけて作りました。繭はそれほど分厚くなく、中身が透けて見える程度で完成しました。繭は上から触るとパリパリとした感触で、強く押すとひしゃげてしまいそうな強度でした。
3月2日
中の蛹が背面から黒くなってきました。その後10日ほどかけて全面が黒くなりました。
3月14日
夜8時頃気づいたときには繭から8cmほど上に止まっていました。夕方にはまだ繭の中にいたことを確認したので、羽化は数時間内に完了したと思われます。
なお、2月24日から3週間近く室内の暖房のかかった部屋で飼育したため、野外とは異なる経過をたどった可能性があります。
私のレタスを食べたのは、イラクサギンウワバ
成虫になった青虫は、ヤガ科のイラクサギンウワバ Trichoplusia ni という種でした。イラクサギンウワバは、世界中の温帯から熱帯に広く分布し、日本では、北海道から南西諸島で確認されています。キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科、ナス科、ウリ科、イラクサ科、シソ科、キク科など様々な植物を食べることが知られていますが、今回飼育してみてナデシコ科のミドリハコベも飼育下では食べることが分かりました。兵庫で行われた調査では、成虫は夏から秋にかけてよく見られるようです。
世界では、特に乾燥した地域で農作物の収量や品質を低下させる害虫として知られてきましたが、日本では、それほど発生個体数が多くないとされていました。イラクサギンウワバは、低温耐性が低く冬季の死亡率が高いと言われており、寒冷な地域では越冬できないと考えられています。比較的寒冷な地域で見つかるものは、温暖な地域で越冬したものが暖かい時期に北上した個体や、その個体がその年に繁殖した子孫であると考えられています(イラクサギンウワバは年複数化)。しかし近年、温暖化に伴って、日本国内で越冬可能な地域の北限の上昇や、越冬数増加の可能性が指摘されています。上記の観察個体は、2月末の奈良県で採集したものです。途中から室内で飼育したので、野外で成虫にまで至ったかは定かではありませんが、奈良県でその季節に幼虫が見つかったことは、今年が暖冬であることと関連があるかも知れません。
【参考文献】
八瀬順也 (2005) 野菜におけるイラクサギンウワバの多発生. 植物防疫, 59(1): 14–18.