海は甲殻類、陸は昆虫

2024年6月17日 生物

甲殻類といえばカニやエビなど海にいる生物、昆虫といえばトンボやカブトムシなど陸上にいる生物を連想することが多いのではないでしょうか。今回は、海と陸でそれぞれ繁栄した甲殻類と昆虫のお話です。

実は近縁な甲殻類と昆虫

アオバハゴロモを食べるカニ

アオバハゴロモを食べるカニ

甲殻類と昆虫はどちらも節足動物門に属します。少し前まで昆虫に最も近縁なグループはムカデ、ヤスデなどが含まれる多足類だと考えられていましたが、近年は昆虫はむしろ甲殻類と近縁であり、甲殻類の祖先から進化したと考えられています。なお、クモが含まれる鋏角類は多足類よりもさらに昆虫と遠縁の関係にあります。

海で成功した甲殻類

ナンキョクオキアミ

ナンキョクオキアミ Photo by Uwe Kils I am willing to give the image in 1700 resolution to Wikipedia Uwe Kils, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

7万種が知られている甲殻類の中には、エビ、カニ、ミジンコ、ダンゴムシなどが含まれます。陸域や淡水域に生息するものもありますが、海域に生息するものが多いです。海棲の甲殻類の一種であるナンキョクオキアミは、バイオマス量が1億2500万トンから7億2500万トンと推定されており、この一種だけで他の海洋動物全種の年生産量を超えるといわれています。甲殻類は海で非常に成功した生物といえます。

陸で成功した昆虫

コカブト

コカブト

昆虫は、約4億年前に海から陸に上がった甲殻類から進化したと考えられています。翅は約3億年前に獲得し、それまではシミやイシノミのような翅を持たない生き物でした。

セスジシミ

セスジシミ

昆虫は現在地球上で最も繁栄した動物であり、世界で知られている動物種が約130万種であるのに対して、そのうちの73%にあたる95万種が昆虫です。ですが、海に生息する昆虫はほとんどいません。

陸の生活に特化した昆虫

オカヤドカリの仲間

オカヤドカリの仲間

哺乳動物や鳥類などは体の内部にある骨(内骨格)によって体を支えるのに対し、節足動物は体の外側に堅い殻(外骨格)により体を支えます。甲殻類はカルシウムを使って外骨格を作ります。しかし、陸上では海中ほどカルシウムを容易に得ることができません。また、カルシウムを主成分とする外骨格は重く、水中のように浮力が働かない地上で活動するにあたって多くのエネルギーを必要とします。

タマムシ

ヤマトタマムシ

陸上に進出した昆虫の祖先は空気中にたくさんある酸素を使って軽い外骨格を作る形質を獲得しました。このことは、地上で活動するうえで画期的な進化であったと考えられます。外骨格の軽量化は、飛翔能力の獲得にも寄与したと考えられます。これらのことが、昆虫の陸上での繁栄につながったと考えられます。

【参考文献】

Asano T, Hashimoto K & Everroad RC (2023) Eco-evolutionary implications for a possible contribution of cuticle hardening system in insect evolution and terrestrialisation. Physiological Entomology, 48(2–3): 55–60.