ミイデラゴミムシ、本人はお尻熱くないのかな?
おならで天敵を追い払う生き物といえばスカンクが有名ですが、昆虫界にもおならを武器にするものがいます。今回は、タンパク質を溶かす100℃の屁をこくミイデラゴミムシのお話です。
この記事の目次
ミイデラゴミムシとは?
ミイデラゴミムシ Pheropsophus jessoensis は、甲虫目ホソクビゴミムシ科の昆虫です。「ミイデラ」は、滋賀県大津市の三井寺に由来するという説があります。かの有名な鳥獣戯画の作者、鳥羽僧正が描いた「放屁合戦」というおならをし合って勝負する絵巻物があります。鳥羽僧正は三井寺(園城寺)の長を務めた僧侶です。放屁合戦の絵巻物は三井寺の円満院門跡に残っているとのことで、こうしたことが本種の和名の由来になったのではないかという考えです。
ミイデラゴミムシのおなら
ミイデラゴミムシは、天敵に襲われると、普段体の中で別々に保持している過酸化水素とヒドロキノンを混ぜることにより急激な化学反応をおこし、その生成物である100℃を超える水蒸気とベンゾキノンを尾端から噴射します。ベンゾキノンは、天敵の粘膜や皮膚のタンパク質を破壊する効果があります。この攻撃は、少なくともカエルやカマキリに対して効力があることが報告されています。この高温の毒ガスを噴射する際には、プスッと音がします。また、臭いもすることから、さながらおならのようです。
なお、ベンゾキノンは人の皮膚を変色させる作用もあります。ちなみに今回見つけたミイデラゴミムシは、指でつまむと2回ガスを噴射した後は何も出さなくなりました。ガスの材料のストックがなくなると、攻撃できなくなってしまうという弱点があるようです。
[参考文献]
八尋克郎(2004)ミイデラゴミムシの語源. 地表性甲虫談話会会報, 1: 2-6.
成多林 (2024) 日本の寄生性ゴミムシ概説. ホシザキグリーン財団研究報告, 27: 119–136.