どんぐりに穴を開けた犯人は?
秋に拾って帰ったどんぐりに小さな穴が空いていた経験がある方は多いのではないでしょうか。どんな生き物がなんのために穴を開けたのでしょうか。
どんな生き物がどんぐりに穴を開けるの?
どんぐりに穴を開ける昆虫の中でよくみられるのはゾウムシ上科 Curculionoidea の仲間です。どんぐりに穴をあける種には、甲虫目オトシブミ科のハイイロチョッキリ Cyllorhynchites ursulusや、甲虫目ゾウムシ科シギゾウムシ属のコナラシギゾウムシ Curculio dentipes、クヌギシギゾウムシ Curculio robustusなどがいます。
ハイイロチョッキリは産卵したあと、卵が生み付けられたどんぐりと数枚の葉を枝ごと切り落とします。そのためチョッキリという名が付けられています。シギゾウムシは長い口吻を鳥のシギの嘴に見立てて付けられました。これらゾウムシ科やチョッキリ科に属する種は、どんぐりが落下する前にドングリに穴を開けますが、ドングリが落下したあとに卵を産み付ける昆虫もいます。ドングリキクイムシ Coccotrypes graniceps という甲虫目ゾウムシ科キクイムシ亜科(ないしは甲虫目キクイムシ科)の昆虫は落下したあとのドングリに1.5mmほどの大きさの穴を開け、成虫がその穴に入り込み産卵します。その後、卵が孵化して幼虫が成虫になるまで親もその穴で子どもと同居します。
ゾウムシが作ったどんぐりの穴は少なくとも2つある
ゾウムシ科とオトシブミ科に穴を開けられたどんぐりには、少なくとも小さな穴と大きな穴の2つ穴が開いているはずです。親が産卵のために外側から開けた穴もしくは殻斗に産み付けられた卵から孵化した幼虫が外側から開けた穴と、幼虫が外に出るために内側から開けた穴です。親が生む卵や初齢幼虫は小さいため穴も小さいですが、どんぐりを食べて大きく成長した幼虫が出てくる穴は大きいです。そのため、多くの人が気づくどんぐりの穴は成虫が作った穴ではなく、幼虫が脱出するときに作った穴です。また、成虫が生む卵は一つとは限らないため、複数の幼虫が複数の穴を開ける場合があります。他の幼虫が開けた穴を使うこともあるり、穴の数よりも出てきた幼虫の数の方が多いこともあります。
次回は、ゾウムシの成虫がどのようにして硬いどんぐりの殻に穴を開けるのかについてお話したいと思います。
【参考文献】
高柳芳恵. どんぐりの穴のひみつ. 偕成社, 2006