ザックバランにハランの話

2025年1月26日 生物

お弁当のバランはもともとハランで、そのハランはもともとバランでした。波乱万丈葉蘭之話。

ハランとは?

ハラン

ハラン Aspidistra elatior はキジカクシ目キジカクシ科ハラン属の常緑の多年生植物です。名前にランとついていますが、ランの仲間ではありません。キジカクシ科という分類群にあまり耳馴染みがないかもしれませんが、お馴染みのアスパラガスは本科に属します。中国が原産地と考えられていましたが、現在では、九州南部にある黒島、宇治群島、諏訪之瀬島が自生地であると考えられています。中国で、葉が大きく蘭に似た植物であるということから「馬蘭(バラン)」と名付けられたものが、後にハランと言われるようになり、葉蘭という漢字があてられました。江戸時代に品種改良が進み、多くの品種が作られました。関東以西では野外で冬越しでき、日当たりの悪い環境でも育つため庭によく植えられます。

ハランの葉を模して作られたバラン

バラン

ハランの葉は、お弁当の仕切りに利用されてきました。それを模して人造ハランが作られました。後に人造ハランは、バランと言われるようになりました。つまり、ハランは、人造になって元々の名前である「バラン」という音を取り戻しました。

ハランってどんな植物?

ハランは、地面から一枚だけ葉を伸ばし、それぞれの葉は地下茎で繋がります。ハラン

そのため、地上からはそれぞれの葉がつながっているようには見えません。ハラン
花は、3月から4月頃に地面すれすれに付けます。自生地ではキノコバエの仲間が送粉に寄与している可能性が示唆されています。

ハラン

ハランの花 Photo by yamatsu, CC0, via Wikimedia Commons

果実も翌年の夏頃に地面に半分埋まったような状態でつけます。多く生物媒の植物は花粉を運ぶ昆虫に気づかれやすいように花を咲かせ、また、風媒花の場合は風に当たりやすくするために花を高い場所に付けます。果実に関しても、生物散布であれば動物に見つかりやすい位置に果実をつけ、非生物散布であれば落下したり、風に飛ばされたりしたときにできるだけ遠くに散布されるよう高く伸ばした茎や枝につけるものが多いです。そのため、自分の葉の影になってしまう地面すれすれに花や実をつけるハランは、変わった生態を持っているといえます。