いまいちコウモリらしくないクビワオオコウモリ

コウモリといえば、昼間は洞窟で休み、超音波を使って暗闇を飛び回る生物というイメージがあるかもしれません。しかし、南西諸島に生息するクビワオオコウモリをはじめとするオオコウモリの仲間は、それとは異なる生態をもっています。
南西諸島に生息するクビワオオコウモリ
クビワオオコウモリ Pteropus dasymallusは、オオコウモリ科オオコウモリ属のコウモリで、南西諸島に分布します。名前の通り、暗褐色の体色に首の周りだけ首輪をしたように黄色っぽい毛が生えます。体長は19-25センチメートル、体重300-500グラムほどです。夜間に活動し、昼間は木の枝にぶら下がって休み、洞窟などは利用しません。主にクワ科などの果実を食べますが、葉や花、花蜜、昆虫も食べることがあります。

クビワオオコウモリが好んで食べるギランイヌビワ
夜間、石垣島の森の中で木に止まっているクビワオオコウモリを見つけました。細い枝にぶら下がるだけでなく、太い木の幹でも表面にある小さな出っ張りに鉤爪を引っ掛けてぶら下がることができます。脚を動かすことなく首を動かして、周りの状況を確認しているようでした。
キツネのような顔

クビワオオコウモリ Photo by Nippon510 – Own work, CC BY-SA 4.0, Link
コウモリといえば小さな目にひしゃげた鼻のイメージが強いかもしれませんが、クビワオオコウモリは他のオオコウモリ科のコウモリと同様に、細長い鼻面に大きな目を持ちます。顔だけ見ればキツネや犬のようです。食べ物である果実を視覚と嗅覚を頼りに探すため、目と鼻が発達したと考えられています。
エコーロケーションの能力を失ったオオコウモリ

クビワオオコウモリ
コウモリは超音波を出してその反射音を聞くことにより、障害物や獲物である虫の位置を把握することができるエコーロケーションを行えることが有名ですが、クビワオオコウモリを含むオオコウモリ科のコウモリの多くはその能力を持っていません。近年の研究により、オオコウモリはもともと持っていたエコーロケーションの能力を進化の過程で失ったと考えられています。空中を動いて逃げ回るわけでもない木に実る果実を得るのに、エコーロケーションはそれほど役に立たないためと考えられます。そのため、オオコウモリは超音波を聞く必要がなく、コウモリにしては耳もそれほど大きくありません。
[参考文献]
Wang, Z., Zhu, T., Xue, H., Fang, N., Zhang, J., Zhang, L., Pang, J., Teeling, E.C., and Zhang, S. 2017. Prenatal development supports a single origin of laryngeal echolocation in bats. Nat Ecol Evol 1: 0021. doi:10.1038/s41559-016-0021.