鵲鷺詐欺

鵲(カササギ)。その名は知っているけれどどんな鳥かと聞かれたらピンとこない、そんな人が多いのではないでしょうか。今回はカササギという鳥についてのお話です。
カササギとは?
カササギ Pica picaは、スズメ目カラス科カササギ属の鳥です。ちなみに、学名は発音すると「ピカピカ」です。コサギやアオサギなどのサギ類はペリカン目サギ科に属し、本種はカラス科であるので、サギとは全く関係がない分類群の鳥です。世界では、ヨーロッパからアジアの旧北区に加え、従来別種とされていた2種を亜種として含めると北アメリカ西部にも分布します。人里で多く見られ、昆虫や木の実などを食べます。地面を歩き回って食べ物を探すことも多く、人が育てた果物や野菜を食べることもあります。
巣は、樹上に枝などを集めて直径60cmから80cmの球状のものを作ります。地域によっては電柱などにも営巣します。日本では、卵や雛はカラスに捕食されることが報告されています。

カササギのものと思われる鳥の巣
一年中つがいで縄張りを維持し、つがいの関係はどちらかが死ぬまで続きます。日本では、九州以外ではほとんどみられない鳥です。
日本の多くの地域で稀な鳥がどうして有名なの?

浅草寺の白鷺の舞の様子 Photo by Tak1701d, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
カササギは、日本国内では多くの地域で珍しい鳥ですが、世界的には旧北区と新北区に広く分布するよく知られた鳥です。中国では、七夕伝説において天の川に織姫と彦星が会うための橋を架ける鳥とて知られており、その橋は鵲橋(かささぎばし)と呼ばれています。その七夕の話にちなんで、奈良時代に大伴家持が「かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける」という歌を詠ました。その歌が新古今和歌集や小倉百人一首に載せられたことでカササギが日本でも知られるようになりました。
しかし、国内では馴染が薄いカササギを日本人はサギの仲間と考えたらしく、室町時代からある七夕伝説に因んだ伝統舞踊では白いサギが橋掛役として登場し、その舞踊の名も鷺舞(さぎまい)と呼ばれています。日本人がカササギの名前だけを知っていて姿をよく知らないのは、どうやら由緒があることのようです。