ホタルみたい

前回、ホタルの光は、毒があることを知らせる警告色の役割があるのではないかというお話をしました。今回は、光らなくてもホタルの姿に擬態していると考えられる昆虫のお話です。
ホタルに擬態していると考えられる昆虫

ゲンジボタル Photo by Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
私たちがよく知っている発光するホタルの成虫の多くは夜行性ですが、発光しないもしくは弱くしか光らないホタルの中には、昼行性の種も多く存在します。こうした昼行性のホタルも夜行性の種と同様に、黒い体に胸部やその周辺に赤い模様を持つものが多くいます。

オバボタル:成虫はほとんど発光せず、昼間に活動する。(Photo by harum.koh from Kobe city, Japan, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons)
例えば、カミキリムシ科のホタルカミキリ、ホタルモドキ科のムネアカホソホタルモドキ、ツチハンミョウ科のマメハンミョウ、ケバエ科ヒメセアカケバエ、ハバチ科のニレチュウレンジなどがあげられます。ハチやテントウムシと異なり、ホタルは私達にはそれほど派手には見えませんが、このカラーに毒を持っていることを知らせる警告色としての効果があると考えられます。これらの昆虫のように毒や不快成分を持つ種に姿を似せることにより、天敵に有害な昆虫であるかのように誤認させ、捕食を免れるための擬態をベイツ型擬態といいます。
草の上にいたニレチュウレンジ

ニレチュウレンジ
ホタルは、コウチュウ目の昆虫ですが、ハチ目の中にもホタルに擬態していると思われるものがいます。ニレチュウレンジ Arge captiva は、黒い体に、胸だけ赤く、体の大きさも8ミリほどでちょうどヘイケボタルほどです。私が見つけた個体は草の上におり、遠目にはホタルに見えました。
ニレチュウレンジの生態

ニレチュウレンジ
ニレチュウレンジは、ハチ目ハバチ科の昆虫です。国内では北海道から四国に分布し、国外では朝鮮半島や中国でみられます。幼虫は、ハルニレ、アキニレなどのニレ科の植物を食べます。年2化で、幼虫は6月と8-9月に発生します。幼虫が大量に発生し、食害を受けた樹木では、樹勢が衰えたり枯死するほどのインパクトを与えることもあります。成虫は、5-7月頃にみられ、これは概ねホタルの出現時期と重なります。