ウミウシを食べるウミウシ

磯でキヌハダモドキというウミウシを見つけました。今回は、ウミウシが見つかった場所の様子や水中にいるときの様子、水から上げたときの様子などについてのお話です。
キヌハダモドキってどんなウミウシ?


キヌハダモドキ Gymnodoris citrina は体長2.5cmほどのウミウシです。日本、フィリピン、ハワイ、オーストラリア、マダガスカルなどで記録があります。体色は白から黄色で、橙色から赤色の小さな突起が体に散在します。よくみると前方部分がギザギザしており、他のウミウシとは異なった雰囲気があります。
体の中央には、他の多くのウミウシと同様に二次鰓と呼ばれる呼吸をする(水中の溶存酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する)ための器官がみられます。また、前方にあるウサギの耳のような2つの突起は触覚で、水中の化学物質を受容し、餌を探索するのに利用していると考えられています。水中で移動するキヌハダモドキ:ナメクジのようにゆっくり動きます。
どんなところで見つかった?

干潮時に水深30cmくらいの磯で二匹みつかりました。簡単に裏返せるほどのサイズの石の裏についていました。周りには、ナマコやウニ、イソギンチャク、ヒラムシの仲間などいろいろな生きものがいました。
水から上がると原型を留めない
ウミウシの体表面は非常に柔らかく、水から上げると突起のない表面が滑らかな塊になってしまいます。

典型的なウミウシの外見とはかなり雰囲気が異なります。しかも数センチしかないため、突起のたくさんあるウミウシっぽい形の目立つ生き物を想像しながら、水から引き上げた石の上を探しても、なかなかその存在に気づくことができません。
ウミウシを食べるキヌハダモドキ

ウミウシは肉食のものがほとんどです。キヌハダモドキは他のウミウシに取り付いて、中身だけを吸い取って食べる少し変わったウミウシです。これまでに同属他種とその卵塊、オカダウミウシ科のオカダウミウシを捕食することが報告されています。また、同種も捕食し、交尾時に交尾相手を捕食する性的共食いを行うことも知られています。