森林でやたら足の長く体が小さい生き物を見たことはないでしょうか。足が8本あるからクモだと思う人も多いかもしれませんが、もしかしたら、それはザトウムシかもしれません。今回は、ザトウムシという生物についてのお話です。
ザトウムシとは?
節足動物門クモガタ鋼ザトウムシ目に属する生物の総称です。2017 年時点で、世界に6650種いることが知られています。日本からは、80種ほどが報告されています。ザトウムシは、第二脚の最も長い足を前に伸ばして探りながら歩く様子が、盲人が杖で歩く姿に似ていることから、「座頭(ざとう):江戸時代の盲人の階級の一つ」の名がつけられています。また、目が小さく目立たないことから、日本では古くは「メクラグモ」と呼ばれたこともあり、中国では「盲蛛」という名もつけられています。クモのように見える種が多いですが、クモよりはダニやサソリに近い生物です。
ザトウムシの生態
ザトウムシに属する多くの種が雑食であり、昆虫、生物の死骸、植物、キノコなどを食べます。また、糞を食べる種もいます。夜行性のものが多く、昼間は植物に捕まってじっとしていることが多いです。日本では単独で見られることも多いですが、海外には7万匹を超す大群をつくる種もいるようです。
どんな環境に生息するの?
森林ではよく見られますが、都市部の公園や庭ではほとんど見られません。薄暗く湿った森林環境を好む種が多いですが、乾燥地帯や海岸に住む種もいます。よく見つかる足の長い種は、草や低木の上、地面で生活するものが多いですが、小型のものの中には落ち葉の中で生活するものもいます。
ザトウムシの動き方
林縁で見つけた大型のザトウムシの動きをよく観察してみました。
動きは基本的にはゆっくりで、つついてみると少し移動しますがすぐに動きを止めて全く動かなくなりました。おそらく、あまり動かないことで天敵に見失わせる戦略をとっていると考えられます。しかし、しつこくつつくと、見失わせる作戦を諦めたのか今度は、急いで移動を始めました。足が長いおかげか、そこそこ早く移動ができます。これによりクモや昆虫、トカゲや小さなヘビなどからは、うまく逃げられるかもしれません。しかし、タヌキやイタチなどの哺乳動物には追いかけられる程度の速さです。長い足が邪魔をして、他の昆虫がよくやるような落ち葉の隙間に潜り込んで隠れることができないのが大型のザトウムシの難点のようです。長い足で地面の数センチ上をのしのしと移動するため、離れても動いていると目立ちます。ザトウムシは、それほど俊敏に動けない、かつ、物の隙間に隠れるのも苦手ということから、天敵(特に鳥)が少なくなる夜間に動き、昼間は基本的にはじっとして見つからないようにするという戦略をとっていると考えられます。
ザトウムシの変な体
ザトウムシの体
前体と後体に分かれますが、クモのようなくびれはありません。脚はすべて前体についています。また、口も腹面についています。
ザトウムシの眼
体の背面に一対のつぶらな眼があります。ザトウムシのほとんどの種が同様の場所に一対の眼を持っています。視力はあまり良くないと考えられています。
ザトウムシの足
前から二つ目の足が他の足に比べてより長いものが多いです。体の他の部分が停止していても、その足だけを動かし、周りの様子を探っているようにみえることもよくあります。歩くときも、トントンと前にあるものをその足で触りながら歩きます。目があまり発達していない分、脚が昆虫の触覚のように周りの環境を把握するための重要な器官になっていると考えられます。
昆虫のような大きな鉤爪はなく、しなやかな足の先を少し巻きつけるようにして、物を掴みます。