オリックスは、日本の動物園でもよく飼育されている動物で、名前だけは知っているという方は多いかもしれません。オリックスはそれほど変わった動物に見えませんが、気温の高い乾燥地に適応するために、体に特異なしくみを持っています。今回は、意外とすごいオリックスについて。
オリックスとは?
オリックス Oryx gazella は、ウシ科オリックス属の大型草食動物です。体長は1.6〜2.4m、体重は100〜210キロほどあります。生息地はアフリカ南西部の半砂漠、草原、サバンナ地帯です。日中の気温が40℃を超える高温かつ乾燥した環境でも生存することができます。10〜30頭ほどの群れをで行動し、草や低木の葉を食べます。
オリックスが高温かつ乾燥環境で生存する方法
多くの哺乳動物は体温を一定に保つために、気温が上昇すれば汗をかいたり、呼吸を早くすることによって体の水分を蒸発させ、気化熱によって体温を下げます。しかし、オリックスは水分が不足していると、体温が45℃くらいになるまでは呼吸を早くすることなく高温に耐えます。つまり、オリックスは高温に耐える能力を獲得することによって、体温維持のために使用する水分量を減らし、高温かつ摂取できる水分が極端に少ない乾燥地でも生息できるようになりました。
どうしてオリックスは高体温に耐えられるのか。
オリックスは体温が45℃になっても生きることができますが、その理由は頭部の特殊な構造にあります。多くの哺乳動物は、脳の温度が43℃ほどになると数時間ほどしか生存できないといわれます。オリックスは脳に血液を送る動脈が脳に入る直前に細かく枝分かれしており、静脈と絡み合っています。この静脈には、呼吸によって鼻腔で冷やされた静脈血が流れており、脳に行く動脈血を冷やします。この構造により脳の温度を平均2.9℃も体温より下げることができると言われています。
乾燥地で効率よく水分を得るオリックス
上述の通り、オリックスは非常に乾燥した環境に生息しており、水飲み場の水が干上がることもあります。しかし、飲める水がなくなっても、オリックスはしばらくの間は生き延びることができます。オリックスが食べる草は、昼間には非常に乾燥しているのですが、夜間に空気中の水分を取り込み含水率が上昇します。オリックスは、夜間にこの空気中の水分を溜め込んだ草を食べることによって、生存に必要な水分を得ます。
【参考文献】
小原秀雄 ほか. (1984). ツルはなぜ一本足で眠るのか – 適応の動物誌. 草思社.