お辞儀する理由

奈良の鹿の話ではありません。オジギソウの話です。
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オジギソウとは?

オジギソウ Mimosa pudica は、マメ科オジギソウ属の一年または多年草です。原産地は、南アメリカです。アメリカ南部、南アジア、東アジア、ミクロネシア、オーストラリア、南アフリカ、西アフリカなど世界中の熱帯地域に広く移入分布します。日本には江戸末期にオランダから持ち込まれ、沖縄で野生化しています。寒さに弱いため、沖縄より北の地域では冬季に枯れます。属名は Mimosa(ミモザ)ですが、日本でミモザというとオジギソウと葉や花の形が似ているということからイギリスでMimosaと呼ばれていたアカシア属(Acacia)のフサアカシア Acacia dealbata やギンヨウアカシア Acacia baileyana のことを指します。

オジギソウの属名 Mimosa は、古代ギリシアでパントマイムの起源とされる身振り劇 mimos に由来するといわれています。
オジギソウの葉の動き方
オジギソウは、刺激を与えられると、葉を閉じるように動きます。


葉の先端、基部にかかわらず、基本的に刺激を与えられた葉のみが動きますが、その拍子に振動が伝わるとその近くの葉も動きます。刺激は、葉の表面から加えられたときの方が裏面から加えられたときよりも敏感に動くように見受けられます。株全体を揺さぶるように動かすと、株全部の葉が閉じます。
また、葉柄に刺激を与えると、お辞儀するように葉柄の基部からも倒れ込みます。
また、オジギソウは夜になると葉を閉じます。光合成ができない時間帯は、葉を開いておくよりも閉じておいた方が、不要な蒸散を抑えたり、被食のリスクを下げたりできる可能性があります。
どうして動くの?
遺伝子組換えにより刺激を与えられても動かないオジギソウと、普通のオジギソウをオンブバッタに食べさせたところ、オンブバッタは、動くオジギソウに対して動かないオジギソウの葉に約2倍以上長く滞在し、約2倍動かないオジギソウの葉をよく食べたことが報告されています。また、広食性のオオタバコガの幼虫でも同様の結果が出ています。つまり、オジギソウが葉を動かすのは、昆虫に葉を食べられないようにするためであることが示唆されます。

ちなみに、葉が動くことで有名なオジギソウですが、茎には鋭いトゲもついています。これも、動物の被食に対する防衛の役割を果たすと考えられます。
【参考文献】
Hagihara T, Mano H, Miura T, Hasebe M & Toyota M (2022) Calcium-mediated rapid movements defend against herbivorous insects in Mimosa pudica. Nature Communications, 13(1): 1–9.