2026年1月20日

午は牛とぜんぜん違う

前回はウマの仲間についてのお話をしました。ウマ科は奇蹄目に分類されます。大型の草食獣の多くは偶蹄目か奇蹄目に属するのですが、その多くは偶蹄目に属し、奇蹄目は比較的レアです。今回は、偶蹄目の繁栄と奇蹄目ウマ科の生き残りについてお話したいと思います。

偶蹄目と奇蹄目

ニホンジカ:偶蹄目

偶蹄目と奇蹄目では、現存する種数には大きな差があります。偶蹄目はラクダ科、イノシシ科、ペッカリー科、マメジカ科、ジャコウジカ科、シカ科、キリン科、プロングホーン科、ウシ科、カバ科の10科80-90属200-250種が含まれます。一方、奇蹄目はウマ科、サイ科、バク科の3科6属15-18種です。分布域についても、偶蹄目はオーストラリアや南極大陸を除いてほぼ全世界に自然分布する一方、奇蹄目はアジア、アフリカ、中南米の一部の地域に不連続に分布するにとどまります。

偶蹄目が繁栄した理由

ウシ:偶蹄目

現在では、圧倒的に偶蹄目が奇蹄目に比べて繁栄していますが、その要因の一つとして、消化能力の違いが考えられています。

偶蹄目の多くの種は複数の胃をもち、一度胃に入れたものを吐き戻してもう一度噛み、また胃に戻すという反芻能力を獲得しました。このことにより、栄養価が少ない植物から効率よく栄養を吸収することができます。一方で、奇蹄目は反芻しないため、一般に偶蹄目よりも食物の吸収効率が劣り、同じエネルギーを得るためには大量の餌資源を摂取する必要があります。

5500万年前から3500万年前まで、奇蹄目は70属を超えるほどに多様化した時期もあり、偶蹄目よりも繁栄していたと考えられています。ところが、地球の寒冷化に伴い森林が減って草原が増え、現在のイネ科草本のような消化しにくい植物が増えたことにより、高い消化能力をもつ偶蹄目が優勢になったと考えられています。

草原で偶蹄目に負けなかったウマ科

ウマ:奇蹄目

奇蹄目の動物はもともと熱帯林に生息しており、ウマ科、サイ科、バク科の祖先はすべて北アメリカで生まれ、バク科、サイ科が森林に適応したのに対してウマ科は草原に適応しました。

奇蹄目であるウマ科の動物は、多くの反芻を行う消化能力の高い偶蹄目の動物よりもさらに質が悪いが大量に存在する餌資源を利用します。ウマ科は餌を後腸発酵によって消化するため、反芻動物のように胃内で発酵が進むのを待ってから次の餌を摂取する必要がありません。そのため、採餌を中断することなく大量の餌資源を摂取することが可能なのです。

つまりウマ科の動物は、かつて多様であった奇蹄目の中にあって、消化能力の低さを、質は低いが豊富に存在する餌資源を大量に摂取することで補い、高い消化効率をもつ一方で、ウマに比べれば餌を選り好みする偶蹄目に匹敵するニッチを獲得してきた精鋭であるといえます。