ダイエット成功!?体がスマートになったハチの進化史

2020年6月13日 ALL生物

ハチは、進化の過程で食べ物や生活様式を変え、その都度、体の構造も変化させてきました。現生するハチたちを見ると、その進化の過程を観察することができます。今回は、ハチの進化に焦点を当ててお話したいと思います。

ハチの進化史

ハチの仲間は、もともとキバチ・ハバチ類のように、幼虫が植物の葉や材を食べていました。

マツノキハバチの幼虫

マツの葉を食べるマツノキハバチの幼虫

その一部から、他の昆虫に寄生して、より栄養価の高い肉を食べるものが現れました。それが、コバチ、ヒメバチなどの寄生バチの仲間です。その寄生バチの一部から寄生の際に産卵管として使っていた管を毒針として使うものが現れました。それらが、有剣類と呼ばれるハチです。有剣類であるカリバチ類は、獲物を仕留めたり、捕食者から身を守るために毒針を使います。カリバチ類の一種であるツチバチの祖先種の一部が、羽を落として地上徘徊に特化したアリと、ミツバチ上科に進化しました。ミツバチ上科は、狩りを行うアナバチ類と、植物の花粉を利用するハナバチ類に分けられます。

ハチの進化史

 

ハチはもともとズンドウだった!?

ハチの絵を書くとき、頭、胸、腹の3つのお団子がくっついたような形を書くことが多いのではないでしょうか。実際のハチも特に胸と腹の結合部が非常に細くなっています。この典型的だと思われがちなハチのフォルムは、進化的に最も古い分類群であるキバチ・ハバチ類には、見られません。

ルリチュウレンジ

ハバチの仲間であるルリチュウレンジ

進化的に、ハチの胸と腹の間が非常に細くなったのは、寄生バチからです。寄生バチは、寄生相手の昆虫に卵を産み付ける際に、腹の部分を曲げて産卵管を器用に寄生相手に挿し込む必要があります。腹と胸の間を細くすることによって、腹を急角度に曲げることができるようになりました。この急角度に曲がる腹の先についた産卵管により、寄生バチは、効率よく寄生相手に卵を産み付けることができるようになりました。

寄生バチの一種

アリは、羽を落としたハチ

アリの形態は、ハチにそっくりです。それもそのはず。アリは有剣類に属し、飛ぶことをやめたカリバチといえます。アリは、基本的にはカリバチと同様に他の生き物の肉を幼虫に運びます。

ムネアカオオアリの女王

ムネアカオオアリの女王
アリであっても女王やオスには羽があります。

植物食に逆戻りしたハナバチ

シロツメクサの蜜を吸うセイヨウミツバチ

アリと同じようにハナバチもカリバチから進化しました。カリバチが他の生き物の肉を幼虫に運ぶのに対して、ハナバチは、花の花粉を運ぶようになりました。ハチの進化の初期に出てきたキバチやハバチの幼虫が植物食だったことから考えると、ハナバチは、また、植物食に逆戻りしたことになります。しかし、葉や材を食べるキバチやハバチと異なり、ハナバチは、花粉や蜜を利用します。植物にとって、葉や材を食べるキバチやハバチは、害にしかなりませんが、蜜を集めながら花粉を運んでくれるハナバチは、植物にとっても良いパートナーとなり得ます。

 

参考文献

Johnson BR, Borowiec ML, Chiu JC, Lee EK, Atallah J, Ward PS. Phylogenomics resolves evolutionary relationships among ants, bees, and wasps. Current Biology. 2013;23:2058-2062.