まずは、この動画をご覧ください。
どえらい迫力ですね。カンボジアの遺跡を歩いていると足元に、まるで黒い川でも流れているかのように動く生き物の大群を見つけました。この生き物の名前は、スミオオキノコシロアリ。カンボジアやマレーシア、タイなど東南アジア地域に住んでいます。日本でよく見かけるシロアリは白いため、シロアリは白いものだと思っている方も多いかもしれませんが、シロアリの中には黒い種類もいます。名前と見た目から、シロアリをアリの仲間だと勘違いしそうですが、シロアリはアリではなく実はゴキブリの仲間です。ちなみに、アリはハチの仲間です。
動画中のスミオオキノコシロアリ、大きい個体と小さい個体がいることにお気づきでしょうか。
大きい個体は、行列の外側でフラフラしていることが多く、おそらく兵隊シロアリです。手を出してみると立派な顎でしっかり噛みつかれました。ちょっと痛かったです。
このスミオオキノコシロアリ、面白い習性があります。日本では、シロアリは、木材を食べ、家をボロボロにする困り者として知られていますが、スミオオキノコシロアリはキノコを食べます。そのキノコはどこかから取ってくるのではなく、自分の巣穴で栽培するようです。スミオオキノコシロアリは、落葉などを食べますが、落葉からはあまり栄養を吸収できずに、巣の中でうんちをします。そのうんちがある種のキノコにとって好適な栄養源になるようです。スミオオキノコシロアリは、落葉をうんちに変え、そのうんちで育ったキノコを食べることによって、栄養を得るようです。
このスミオオキノコシロアリの大群を見て、テンションが上った私は、小学生よろしく近くにあった巣穴っぽい穴に木を突っ込んでみました。
そんなに噛み付いてこないね〜なんて言ってたら、みるみるその巣穴にシロアリが吸い込まれていって・・・10分あまりであんなに大量にいたシロアリが殆どいなくなりました。
穴からは兵隊シロアリばかりが顔を出していました。
しかも、よく見ていると、、、
穴がどんどん泥で蓋されていきました。なんとスピーディーな対応。
最終的には、しっかりと穴がふさがりました。
この地域にはシロアリを食べるセンザンコウという全身を鱗で覆われた奇妙な生き物がいます。
センザンコウは、シロアリの穴に長い舌を入れて、シロアリを舌にくっつけて食べます。このスミオオキノコシロアリもセンザンコウの餌食になるのかどうか、確かなことはわかりませんが、このような哺乳動物の捕食を免れるために、あっという間に巣に避難して穴を埋めてしまうという習性を持っているのかもしれません。
ちなみに、スミオオキノコシロアリの巣のすぐ近くには、本物のアリもいて、少なくとも2種のアリがスミオオキノコシロアリを捕まえていました。
捕まっていたのは兵隊シロアリばかりでした。やはり兵隊シロアリは死んでしまう可能性が高い仕事を担当するのでしょうか。
スミオオキノコシロアリは、個別にはあまり行動せず、大群で動き、その行列の外側には兵隊アリを配置することによって、アリなどからの攻撃に備えているように見受けられます。