紅葉がきれいな季節になってきました。
本格的な冬を前に、私たちを楽しませてくれる紅葉ですが、どうして紅葉が起こるのかについては、よく知らない人も多いのではないでしょうか。
今回は、紅葉のメカニズムについてのお話です。
紅葉の色の違いはなぜ起こる?
まず、紅葉の色と聞いて思い浮かべるのは、黄色と赤です。この色の違いは、異なったメカニズムによって起こっています。
図を用いて以下に説明します。
アントシアニンがよく生成された葉は、赤色、されていない葉は黄色になるようです。
植物にとって、葉が赤や黄に変わることの意味は特になく、ただ、緑のクロロフィルが分解されたために起こる副次的なことと一般的には認識されているようです。
葉を赤くするアントシアニンはどのように作られるの?
アントシアニンの生成過程は以下のようにおこります。
- エチレンの働きで葉と茎の間に離層が形成され、葉、茎間の物質輸送が遮断
- 葉緑体の崩壊
- 葉緑体中にあったタンパク質がアミノ酸に分解、葉肉細胞の高分子炭水化物が糖に分解
- アミノ酸や糖が葉内に蓄積
- アミノ酸や糖からアントシアニンができる
またアントシアニンは日に当たるとよく生成されるようです。
どうして、一本の木でも紅葉していたりしていなかったりする葉があるの?
一本の木についている葉でも、緑、赤、黄色の葉が混ざっている場合があります。
これには、日当たりと気温が関係しているようです。
[クロロフィルの分解と気象条件]
- 日最低気温が概ね8℃以下で開始。
- 日当たりが良い箇所は、悪い箇所よりも分解が促進される。
- 朝と晩の寒暖差があると促進。
- 8℃ – 日最低気温 の積算が大きいと早く進む。
[アントシアニンの生成と気象条件]
- 日が当たると起こる。
つまり、
[日が当たる]
- いち早くクロロフィルが分解され、アントシアニンが生成して赤くなる。
[中間的な日当たり]
- クロロフィルが分解され、アントシアニンが生成されないと黄色になる。
[日が当たらない]
- 日最低気温が低い日が多ければクロロフィルが分解され黄色になる。
- 日最低気温が高い日が多ければクロロフィルが分解されず緑色になる。
日最低気温が低い日が多ければ、日当たりの悪い場所でもクロロフィルが分解されて黄色く紅葉するのですが、日最低気温が高い日が多いと、日当たりによって赤、黄色、緑が一つの木に混在することになります。
きれいに紅葉する気象条件は?
- 朝晩の寒暖差が激しい。
効果: クロロフィルが分解され、緑の部分がなくなる。 - 日最低気温が低い。
効果: 日当たりによらず、クロロフィルが分解され、木全体が紅葉する。 - 日当たりが良い。(晴れた日が多い)
効果: アントシアニンが生成され、赤くなる。 - 乾燥しすぎない。
効果: 葉に水分が残った状態が保たれ、茶色く枯れない。
[引用文献]
林 将之 (2008). 紅葉ハンドブック 文一総合出版
佐藤直樹 (2014). しくみと原理で解き明かす 植物生理学 裳華房
山本良一・曽我康一・宮本健助・井上雅裕 (2017). 絵とき 植物生理学入門 オーム社