ナナフシは、その変わった見た目と動き方から、森で出会うとテンションが上がる昆虫の一つです。英語では、Stick insectと呼ばれ、まさに棒状の昆虫です。でも、日本では、残念ながらあまり出会うことがないです。もともとあまり動かず枝に擬態しているため、見つけにくいのに加え、個体数も少ないからです。しかし、熱帯に行くと、非常に頻繁にいろいろな種類のナナフシに出会うことができます。今回は、存在はよく知られているけれど、日本人にとってはあまり身近ではないナナフシについてのお話です。ボルネオで撮影した、独特な形のナナフシの写真をたくさん紹介します。
ナナフシとは?
ナナフシは、世界に2500種いるとされています。日本には、18種います。基本的に熱帯地域を好む昆虫です。東南アジアの森を歩いていると、日本よりは随分高い頻度でナナフシに出会うことができます。しかも、かなり、いろいろな種類のナナフシが見つかります。種類はたくさんいますが、多くの種に共通した特徴が、体が細長いということです。
また、ほとんどの種類のナナフシが緑色か、茶色、黒色をしており、森の中では目立たない色をしています。
飛べるナナフシと飛べないナナフシ
ナナフシは、羽をもち、空を飛ぶことができるトビナナフシと、羽を持たず飛ぶことができないナナフシの2つに大きく分けられます。羽を持つトビナナフシは、一般的に、体が細くて小さく、自分の好きな植物のある場所に移動して餌を食べることができるため、限られた種類の植物しか食べない狭食性の種が多いようです。
羽を持たないナナフシは、体がズングリムックリした種も多くおり、世界一大きな昆虫といわれている昆虫も飛べないナナフシの仲間です。これらの飛べないナナフシは、移動能力が低いため、様々な種類の植物の葉を食べることができる広食性で、比較的近くにある植物を手当たり次第食べる種が多いようです。大きなナナフシになると、捕まえても、さっさと逃げることを諦め、すぐに、枝の形をして固まります。生き残れるかどうかは、もっぱら自身の擬態能力にゆだねているようです。更に大きなナナフシになると、擬態も諦めて、トゲトゲの体を精一杯大きくみせて威嚇の体勢をとるものもあります。
緑の葉の上で不自然に曲がって固まった飛べないナナフシ、ちぎれた枝の端くれに見せかけようとしているのでしょうか。
同じナナフシが、自分の体色と非常に似た場所に移動しました。どこにいるでしょう。
答えは赤い矢印の先です。
体をまっすぐさせて、見事に背景と同化しました。こんなところに潜んでいたら森を歩いていても全く気が付きません。自分がいる環境によって、どんな体勢で固まるかも考えているようです。なかなか巧妙です。
メスしかいない!?ナナフシの不思議
ナナフシは、普通種でありながらオスが4匹しか見つかったことのない種や、メスしか見つかったことのない種もあります。ナナフシの多くの種は、卵が未受精でも発生します。つまり、メスだけで次世代を作ることができるということです。オスとメス両方が必要な生殖を両性生殖という一方、こういったオスが生殖に参加しなくてもメスだけで次世代が残せる生殖を単為生殖といいます。ナナフシの多くの種は、この単為生殖ができる珍しい昆虫です。