ちょっと恋をしに -春を楽しみに日本にやってくるツバメのお話-

2019年6月18日 ALL生物

今年も、街のあちらこちらで、ツバメが賑やかに子育てをしています。日本で忙しそうに飛び回っているツバメですが、子育てが終わるとまた、南の島に帰っていきます。今回は、そんな働き者のツバメの話です。

世界のツバメと日本で見られるツバメ

ツバメ科の鳥は、世界に83種生息しています。その中で、日本で見られる種は、イワツバメ、コシアカツバメ、リュウキュウツバメ、ショウドウツバメ、ツバメの5種です。日本の街中でよく見られる種は、ツバメ Hirundo rustica  であり、アジア、ヨーロッパ、アメリカと世界中に住んでいます。ヨーロッパに生息するツバメは、冬にアフリカに渡り、北アメリカに生息するツバメは、冬に南アメリカに渡ることが知られており、日本で見られるような季節による移動と同様のパターンがみられるようです。

ツバメの分布

ツバメの分布。色の違いは亜種の違いを表す。Figure by MPF, different colors for subsecies Kersti [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

ツバメは、なぜ春に日本にやってくるの?

ツバメは、毎年わざわざ東南アジア地域から日本にやってきて子育てをしています。冬鳥が、寒い季節に、北の地域から、比較的暖かい日本に南下して越冬するのはわかりやすいですが、熱帯地域はいつでも暖かいのだから、わざわざ移動してこなくても、餌となる虫は1年中いそうなものです。ですが、熱帯地域が温帯地域よりも常に虫が多いのかというとそうでもないようです。温帯地域では、冬が終わり、春になるころ、爆発的に虫が出現します。この時期を狙って、ツバメは子育てをしにやって来ているようです。

ツバメ

ツバメ Photo by Takashi Yanagisawa from Pixabay

ツバメのつがい

ツバメ

ツバメ Photo by Alpsdake [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

ツバメは、次の年も同じ巣に帰ってきて子育てをすることが、しばしば観察されます。帰ってきているのは、去年その巣で子育てをした夫婦です。つがいは、別々に南の島へ向かうと考えられていますが、日本に帰ってくると、前年の巣の前で待ち合わせをするようです。多くの場合、オスが数日早く帰ってきてメスを待つようですが、もし、メスが、巣に戻ってきたときにオスの姿が見えないと、オスほども長期間待つこと無く、別のオスを探しに行ってしまうようです。あまり長く待っていても、長距離の旅から無事に帰ってきて再開できることはあまり期待できないのかもしれません。

ちなみに、ツバメの世界にも、モテるオスとモテないオスがいます。しかも、メスの好みには地域差があるようです。ヨーロッパに生息するツバメは、尾羽が長いオスの方がモテます。一方、アメリカや、日本では、そのような好みは見られず、お腹がより赤いオスがモテる傾向にあるようです。

ハジロシロクロツバメのつがい

ハジロシロクロツバメ Photo by Manojiritty [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

オスは、餌となる虫がたくさん取れ、天敵に襲われにくいところを見つけるとその周辺を縄張りとします。縄張りといっても、同じ牛舎の中に複数つがいの巣ができることがあるぐらいなので、それほど広範囲に排他的な行動をするわけではなさそうです。オスは、縄張り周辺の目立つところにとまって独特の鳴き声を出してメスを誘います。無事にメスに気に入ってもらえると、交尾が成立します。交尾は、3-4月に行われます。

 

参考文献:北村 亘 (2015) 『ツバメの謎』 誠文堂新光社