梅雨が終わり、本格的に暑くなってきました。汗で服がボトボトになる季節です。今回は、血の汗をかくと言われるカバについてのお話です。
この記事の目次
カバってどんな生き物?
カバは、カバ科カバ属に属する哺乳類です。カバ以外のカバ科で現存する種は、コビトカバ属のコビトカバのみです。カバ科と最も近縁な現存する生物は、意外にも、クジラの仲間です。
カバは草原性の生き物で、昼間は水中におり、夜になると陸に上がって主にイネ科の植物を食べます。一日に40キロほどの植物を食べますが、食べる植物のほとんどが陸上の植物のようです。陸上では基本的には川から約3キロ以内の範囲で行動します。普段ののっそりした動きや体型からは、あまり想像できませんが、時速30キロの早さで走ることができます。同種のカバに対してのみでなく、ヒトやワニであっても縄張りに侵入した生物には、非常に攻撃的に立ち向かうため、人が襲われることも少なくありません。
血の汗(?)をかくカバ
ヒトが汗をかくのは、水分を気化させて体温を下げるためです。一方、カバも体の表面から水分を出すことから、「汗をかく」と表現されることがありますが、カバが汗をかくのには、体温を下げる以外の効果もあります。カバは、汗を分泌するための腺である汗腺は持っていません。カバが体の表面に出す液体は、粘液腺と呼ばれる腺から分泌され、ヒトの汗よりも粘り気のある液体です。この粘液によって、カバは、体の表面が乾燥するのを防いでいると考えられてきました。カバの表皮は薄く、乾燥するとすぐにヒビが入ってしまうからです。しかし、最近の研究では、それ以外にも、粘液を出すことによる効果があることがわかってきました。カバが出す液体は、時間が経つと無色から赤色そして茶色に変色します。赤い色素であるヒポスドール酸、オレンジ色の色素であるノルヒポスドール酸と名付けられた2つの色素物質によってこの着色は起こります。これらの物質には、日焼け止めの効果があり、また赤色の物質には、抗菌作用もあることがわかりました。
見た目は、なんだか血を出しているようで痛々しいですが、どうやら「カバの血の汗」はカバの肌の健康には欠かせないクリームのようです。
参考文献: Saikawa, Y., Hashimoto, K., Nakata, M., Yoshihara, M., Nagai, K., Ida, M., & Komiya, T. (2004). The red sweat of the hippopotamus. Nature, 429(6990), 363. https://doi.org/10.1038/429363a