存在感抜群なのに・・・秘密だらけのセミたちのお話

2018年7月28日 ALL生物

強い日差しが照りつけるようになった途端、待ってました!と言わんばかりにセミが一斉に鳴き始めました。私は、アブラゼミの顔が昆虫の中で一番可愛いと小学生の頃からずっと思っています。ちょっと離れたつぶらな瞳と丸みを帯びた輪郭・・・あまり共感してもらえそうにない話はさておき、今回は、セミの一生と棲み分けについてのお話です。

セミの一生

セミの仲間は、地上に出てきて長くても1ヶ月ほどで死んでしまうことはよく知られていますね。エネルギッシュに夏を生きて短命な命を終えるイメージかもしれませんが、日本のセミは、地中で、2~5年ほど幼虫の姿で過ごします。昆虫の中では長命な部類です。
セミの幼虫アブラゼミは7年地中にいると言われていましたが、実際はもう少し短いようです。彼らの卵は、まず枯れ枝に産み付けられます。ハルゼミなど、出現時期が早い種を除き、多くの種類のセミはそこで卵のまま1年を過ごします。卵から出てきた幼虫は、地面に落ち、そこから地中生活が始まります。地中で木の根から養分を吸い取りながら数年を過ごします。地中にいる期間は、その幼虫の栄養状態によって変化すると考えられており、はっきりとは定まっていないようですが、大体のセミは2~5年ほどで成虫になるようです。ちなみに、セミの幼虫は、アロエを使って育てるとうまくいくということが知られています。成長期間は1年のうちの計2ヶ月ほどに限られているようです。セミの幼虫が地中で育つのは、捕食者などに襲われることが少なく安全だからと言われていますが、時々菌に感染し、冬虫夏草になっているものを見かけます。

冬虫夏草

セミから生えた冬虫夏草 in ボルネオ島

土の中には土の中の脅威があるようです。十分に育った幼虫は、地面から這い出し、皆さんご存知のセミの姿になります。

セミの羽化

羽化する途中のセミ

セミの羽化2

羽化中のアブラゼミを下から写したところ。乾くと茶色くなるとは思えないカラフルな色

セミは、全てオスだけが鳴き、メスは鳴きません。長くて1ヶ月ほどと言われる成虫の期間を地上で過ごし、交尾を行って、木の枝に小さな割れ目を作って卵を産み付けます。

ミンミン vs クマ vs アブラ

ミンミンゼミ

ミンミンゼミ

クマゼミ

クマゼミ

アブラゼミ

アブラゼミ

日本では、ミンミンゼミ、クマゼミ、アブラゼミが最も知名度の高いセミ3種ではないでしょうか。ミンミンゼミの声をゆっくり再生するとクマゼミに似た声になるといわれており、メスが両者の声を聞き分けることができない可能性があるようです。そのためか、時期や時間をずらして鳴くことが報告されています。アブラゼミとクマゼミも、夕方と朝にそれぞれ鳴く時間が分かれています。鳴く時間だけでなく、生活場所も日本各地で陣取り合戦が行われているようです。これら3種にはそれぞれ得手不得手があるようです。一般的に、アブラゼミは、乾燥に弱く、ミンミンゼミ、クマゼミは、乾燥に強い傾向があり、クマゼミ、アブラゼミは暑さには強く、ミンミンゼミは暑さに弱い傾向があると言われているようです。クマゼミとミンミンゼミは、暑い地域と比較的冷涼な地域に大体分かれるのですが、アブラゼミに関しては、気温だけでなく、冬期の乾燥の度合いや、幼虫がいる土の湿り気などが関与し合うらしく、乾燥した都市付近で優勢になる地域もあれば、森林付近でしかほとんど見られない地域もあります。私が育った奈良の田舎では、神社など少し木が茂ったところでは、アブラゼミばかりでクマゼミは非常に珍しく、街中の街路樹では、アブラゼミもいないことはありませんが、クマゼミがよく見つかりました。ミンミンゼミの声は、かなり山奥の涼しい所まで入って、深い森林の向こうから響いてくるのを聞いて、セミって本当にミンミン言うんだ!と驚いた小学生の頃の衝撃を今でも覚えています。そのくらいに奈良の平地では滅多にミンミンゼミの鳴き声を聞きません。少なくとも奈良では、3種がそれぞれ典型的な分布をしているようです。

乾燥 暑さ @奈良
ミンミンゼミ 山奥
アブラゼミ 神社
クマゼミ 街中